みすず書房

「引き裂かれた自己」「狂気と家族」につづくレインの新著。ふしぎさに充ち、魅力あふれる小さな本。これは卓抜な精神医学者レインの視野にある症例の集合ではない。これは、人間の出会いがつくる心の状況の多様なシェーマについての、一つのシナリオ、一つの短篇小説、一つの心理的寓話ともいえよう。あるいは定理集、また詩集ともいえよう。人間の心理の世界で、リンネが分類学で試みたことは、まだ実現されていない。これは、一つのデッサンであるが、正確でエレガントである。「マーヤ」の織りなす網、幻想の画布は、終わりない夢の彼方へ、人を誘ってやまないだろう。