みすず書房

カトリックによる宗教統制を掲げる15世紀末のスペイン。追放か改宗かを迫られ、たび重なる異端審問の弾圧を前に改宗を受け入れた者たちは、古いスペイン語で豚を意味する「マラーノ」の名で呼ばれた。
スペイン、ポルトガルからエリザベス朝ロンドン、自由都市アムステルダムへ、反ユダヤ主義の風潮が強まりをみせた19世紀ドイツ。さらに文学作品に描かれた世界を舞台に、改宗ユダヤ人の引き裂かれた内面と、その昇華精神‐サブライムの展開をたどる。

[1994年9月初版発行]

目次

序 マラーノの山
第1章 マラーノの誕生
第2章 マラーノの国王ドン・アントニオ
第3章 エリザベス朝ロンドンのマラーノたち
第4章 シャイロックの冒険
第5章 ウリエル・ダ・コスタの反抗
第6章 マラーノ文学の根源——フェルナンド・デ・ロハスと『ラ・セレスティーナ』について
第7章 スピノザの顔——知性のマラーノ
第8章 ハイネのマラーノ的魅力
第9章 カフカのなかの「マラーノ性」(上)
第10章 カフカのなかの「マラーノ性」(下)


後書きにかえて——子牛の歌
生き続ける過去——1997年ポルトガルの旅から