みすずライブラリー 第2期
崇高と美の観念の起原
A PHILOSOPHICAL INQUIRY INTO THE ORIGIN OF OUR IDEAS OF THE SUBLIME AND BEAUTIFUL
『フランス革命の省察』を著わしたイギリスの政治家、バークの実質的な処女作であり、唯一の美学論考である。1757年刊行当時ロンドンの文壇において、刺激的な問題提起ゆえ好評を博した。
美は均斉調和に基づく、とした古典主義美学の客観的な審美基準を論駁し、感覚主義の立場から日常経験についての心理的観察によって美学上の観念を分類整理する。苦と恐怖に関わり自己維持を目的とする利己的情念と、人間を社交へ導く社会的情念があり、前者を崇高に属するものと考え、愛の感情を生み出す美の原因となる後者と対比した。カントなど近世美学への影響、崇高という美学的カテゴリーを唱導する現代の思想を考察するうえで重要な著作である。
目次
崇高と美についての我々の観念の起原の哲学的研究
訳注
訳者解説
著訳者略歴
- エドマンド・バーク
- Edmund Burke
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1729-1797 イギリスの政治家、政治哲学者。ダブリンに生まれる。法律家の資格を得ようとロンドンに出たが、文筆の世界に転じ『自然社会の擁護』、『崇高と美の観念の起原』(1757)で文壇に登場する。
まもなくウイッグ党貴族の秘書、65年には下院議員となる。国王の金権的専制の企図に伴う憲政の危機に際して、近代の政党政治の原理を『現代の不満の原因』(1770)で唱導した。アメリカ独立戦争の際には、「アメリカの課税に関する演説」、「植民地との和解決議の提案に関する演説」、「アメリカ問題に関してブリストル執行官への書簡」を唱え、植民地への軍事介入の非を熱烈に説き、アメリカの抵抗を支持した。フランスの民主主義と平等の理念に不信を感じていたバークは、フランス革命が勃発するや、これをヨーロッパ秩序への挑戦と受けとめて『フランス革命の省察』(1790)を執筆する。この著書は政治思想史上、保守主義の聖典と称され影響を与えた。
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- ※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
- 中野好之
- なかの・よしゆき
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1931年東京に生れる。1955年東京大学経済学部卒業。元国学院大学・富山国際大学教授。
著書『評伝バーク』(1977、みすず書房)訳書 カッシーラー『啓蒙主義の哲学』(1962、紀伊国屋書店)レスリー・スティーヴン『18世紀イギリス思想史』(1969-70、筑摩書房)『エドマンド・バーク著作集』1、2巻(1973、みすず書房)バートランド・ラッセル『人生についての断章』(共訳、1979、みすず書房)ボズウェル『サミュエル・ジョンソン伝』1-3巻(1981-83、みすず書房)ギボン『ローマ帝国衰亡史』1-4巻 6-10巻(1995-96、ちくま学芸文庫)ほか。
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書評情報
- 松坂健<:ハヤカワ・ミステリ・マガジン2010年8月号>
この本の関連書
「崇高と美の観念の起原」の画像:
「崇高と美の観念の起原」の書籍情報:
- 四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/224頁
- 定価 3,024円(本体2,800円)
- ISBN 4-622-05041-2 C1310
- 1999年6月10日発行