みすず書房

〈バークは政治家が必ず身につけるべき政治的英知の不朽の手引である。彼に学ばぬ政治家は海図をもたずに航行する水夫も同然である。〉(ハロルド・ラスキ)

エドマンド・バークは、イギリス経験論の思想的伝統に立つ文人として出発しながら、まもなく現実の政界という最も生々しい人間世界の舞台に身を投じ、アメリカ独立戦争からフランス革命にかけての歴史上まれにみる激動の時代を〈行動の場における哲学者〉として生きぬいた人間である。抽象的理念と現実的熟慮とのみごとな調和という際立った精神的特性をそなえ、歴史家マコーリーから〈ミルトン以降もっとも偉大な人間〉と評されたこの主人公とその世界に、われわれは盲目であった。しかしいまや、植民地との戦いに敗れた時代閉塞のイギリスにあって、社会的自由と個人的自由、民衆と代表、政党制の効用と必要について説くバークの理性の声に耳を傾けよう。それは政治と理性のみごとな一致の歴史的範例である。バークと彼をめぐるジョンソン博士、ボズウェル、ウィリアム・ピットから巨大な個性的な群像を時代絵巻のなかにえがく新鮮な試み。

[1977年初版発行]

目次

序章 バークは何故に我々とは縁遠いか
第1章 誕生以後、アイルランド在住期
第2章 文壇登場まで
第3章 政界登場の前段階——七年戦争とピット
第4章 ハミルトンとの提携と決裂
第5章 ジョージ三世の登位とウィルクス事件
第6章 第一次ロッキンガム内閣
第7章 チャタム内閣の成立と政党人バークの誕生
第8章  『現代の不満の原因』
第9章 動乱の前の沈滞時期
第10章 勅許状と規制と——インドにおける帝国の問題
第11章 アメリカの危機
第12章 アメリカ独立戦争の展開
1 サラトガ/2 フランスの参戦/3 チャタムのアメリカ演説
第13章 ブリストル選挙区と経済改革

エドマンド・バーク年譜(1780年まで)
参考文献一覧
人名索引