みすず書房

「タルコフスキーが書いたテクストを読むと、その文章や思想は、思考の過程や表現の手法が直截的かつ図式的で、自分の思想の正当性を疑っていない。(…)タルコフスキー映画は、これらのテクストに比べて、格段に豊かである。(…)タルコフスキーは、映画によって、よりよく思索した作家なのだ。」(本書より)

アンドレイ・タルコフスキーは『イワンの子供時代』(『僕の村は戦場だった』)で長編デビュー、その後『アンドレイ・ルブリョフ』『惑星ソラリス』『鏡』『ストーカー』を旧ソ連で、ヨーロッパで『ノスタルジア』『サクリファイス』を作り上げたところで、1986年、パリに客死した。

多いとは言えないこれらの映画は、作家の没後も、見る者に強く静かな衝撃を与えてやまない。難解といわれ、宗教的といわれながら、イメージの叙事詩として開かれた世界の魅力はどこにあるのか?

新しい世代にとってタルコフスキー映画は、現実世界との対話の方法を見つける一規範になるかもしれない、と考える著者は、年来の研究をもとに全作品の技法とテーマ展開を精緻にたどりつつ、来るべき時空への思いをこめてこの一冊を書いた。

目次

01 イメージの論理
02 『ローラーとバイオリン』まで
03 『イワンの子供時代』(『僕の村は戦場だった』)
04 『アンドレイ・ルブリョフ』
05 『惑星ソラリス』
06 『鏡』
07 『ストーカー』
08 『ノスタルジア』
09 『サクリファイス』
10 タルコフスキー映画の21世紀


主要参考文献リスト
謝辞