みすず書房

「丸山眞男が、戦後日本の重要な思想家であることは、多くの人が認めるところであろう。だが、その膨大な作品に結晶している丸山の思想と思考は全体としてどのような構造を成しているか、かれの作品群は相互にどう連関しあってどういう政治原理や人間論を提起しているか、そうした思想的な営みの基底をなす丸山の〈生〉がどういうものであり、それがかれの作品をどう規定しているか、総じて丸山の思想世界はどういうものか——こうした問いを改めて突きつけられると、われわれがもっていた丸山イメージはゆらぎ出す」

著者も記しているように、丸山眞男の思想世界は複合的で、ときに二律背反的にみえる。本書は、丸山の作品群にあらわれた多様な思想的諸要素と思考方法を丹念に追いながら、著者の問題関心ともからめて、一つの思想像を再構成する試みである。学生時代の論文「政治学に於ける国家の概念」『日本政治思想史研究』から『自己内対話』『丸山眞男講義録』まで、佐久間象山、福沢諭吉からヴェーバー、フルトヴェングラーまで、論文・座談を問わず、丸山の作品を網羅した本書からは、一人の思想史家の像がくっきりと浮かび上がる。

巻末に付した三つの「索引」を含め、本書は、これから丸山眞男を読む人のための道案内になるとともに、その開かれた思想世界の全体を今後の時代に生かしてゆくために、なくてはならない書にもなるだろう。

目次

序文
緒論
第1部 丸山における〈生と形式〉
はじめに
第1章 「生」への深いかかわり
1 丸山と「生」の思想家
2 「生」と丸山の学問第2章「形式」の重視
1 「生」の思想とファシズム
2 フィクションとしての「形式」の評価
3 「求道者」的な、「生」への一面化に反発
4 「型」の重視
むすび
第2部 丸山における〈政治主体〉の構造
はじめに
第1章個人と社会の緊密化
I 構造の析出——作品分析から
II 思想史的な位置づけ
第二章 個人の内的自立
I 構造の析出
II 内的自立の技法
第3章 中間考察——「アンチノミーの自覚」
I 二項関係の扱い例
II 思考方法——総括
III 具体例
第4章 主体形成の道
I 旧い精神構造——批判と再評価
II 新しい精神構造へ
むすび
第3部 丸山における〈複合的な思考〉
はじめに
第1章 思想家論・歴史像に見られる〈複合的な思考〉
1 思想家論
2 歴史像
第2章 学問姿勢に見られる〈複合的な思考〉
I 実践と学問の相互関係をめぐって
II 認識の客観性をめぐって
第3章 根本思想上の〈複合的な思考〉——自立性と主体性をめぐって
I ものの見方・考え方
II 社会的存在論
おわりに

丸山眞男著作索引
事項索引
人名索引