みすず書房

「映画批評家の仕事は、同時代に不当に評価された映画作品の意義を(再)評価することにある。しかしそれは同時に、作品がなぜ不遇をかこったのか、その理由を映画史と映画理論の双方において同定する作業ともならなければならない。さもなければ、その(再)発見も批評家のたんなる主観的印象にとどまることになろう。そして、それがさらに既成の映画史と映画理論の再検討をせまらなければ、作品の意義の(再)発見もやはり意味のないものとなるだろう」

本書でとりあげられるのは、『理由なき反抗』ほかニコラス・レイのハリウッド「男性メロドラマ」群、特異な美術家ジョーゼフ・コーネルの実験映画から、現代のCGI(『マトリックス』『タイタニック』)、アニメーション(『千と千尋の神隠し』)まで。『映画とは何か』(吉田秀和賞)につづく気鋭の最新評論集。

目次

第1章 映像と音響のポイエーシス——映画の20世紀
第2章 映画史の今日的変容——『マトリックス』/『ステップス』/『タイタニック』
第3章 ニコラス・レイ論の余白に——1910年代ハリウッドの男性メロドラマ
第4章 ジョーゼフ・コーネル論の余白に——1910年代ニューヨークのロマン主義
第5章 夢見る映画——映画における夢の表象史
第6章 映画は思考する

付録 定義集
あとがき