進駐軍クラブから歌謡曲へ
戦後日本ポピュラー音楽の黎明期
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 224頁 |
定価 | 3,080円 (本体:2,800円) |
ISBN | 978-4-622-07137-2 |
Cコード | C0073 |
発行日 | 2005年4月21日 |
備考 | 現在品切 |
判型 | 四六判 |
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頁数 | 224頁 |
定価 | 3,080円 (本体:2,800円) |
ISBN | 978-4-622-07137-2 |
Cコード | C0073 |
発行日 | 2005年4月21日 |
備考 | 現在品切 |
アメリカ占領下の戦後日本——東京、横浜などの大都市は、進駐軍兵士であふれていた。多くの土地建物が接収され、米軍基地、キャンプ、米軍人のための居住地に早変わりした。これらの場所はオフリミットと呼ばれ、特別に許可された者以外は立ち入りが禁じられる。日本各地に特異な空間が突如出現したのである。
進駐軍クラブに出入りしたバンドマンでは、のちに名を成す、原信夫、穐吉敏子、宮間利之、小野満、ジョージ川口、渡辺貞夫、ホリプロを設立した堀威夫らがいた。演奏されたのはジャズに限らずカントリー&ウエスタン、ハワイアンなど。歌手では雪村いづみ、江利チエミ、ペギー葉山、松尾和子…。また仲介業として関わった者のなかには、やがてナベプロを起こす渡辺美佐・晋夫妻がいた。そうした人びとを育てた場がほかならぬ進駐軍クラブであった。
クラブに関わった人への直接インタヴューでは、さまざまな興味深い事実を知ることができる。その後、華やかな時期を迎える日本ポピュラー音楽や歌謡曲だが、そのスタイルの原型は、このようなクラブで生まれた。ここに多くの可能性と創造の芽があったのだ。本書を読めば多少音楽史観が変わり、こうしたルーツをたどる耳で音楽を聴いてみたくなるだろう。音楽愛好家、そして戦後史に関心のある人びとにとって貴重な一冊である。
私が中学校へ入学する直前の春休みのことである。これから始まる中学生活に期待以上に気負ってしまったのがいけなかった。学習参考書を買いに書店へ行き、あれこれと眺めているうちに、ハードカバーの分厚い『数学1』という参考書を手にとり、大人になった気分で購入した。妙にこの参考書が気に入って、たしか6月頃まで使っていたのだが、ある日を境に内容が難しくて理解できなくなった。あるとき、カバーをよく眺めていると「高校数学1」という小さい文字が目に入った。数学1とは言え、高校生用の参考書を購入していたのである。
この思わず笑ってしまう失敗談は、店頭であれこれと本を眺めつつ選んだから、起きたことではないかと思う。少なくともインターネット上でのお買い物では起こらないだろう。さて、拙著『進駐軍クラブから歌謡曲へ』だが、書店によって置かれている棚が様々である。刊行後に私が書店巡りをしたところ、多くは、音楽か戦後史のコーナーに並んでいた。しかし、ある店でタレントのヒロシ氏の著作の近くに置いてあったのには驚いた。まあ、拙著は博士論文が基になっているので、ある意味、博士(ヒロシ)本なのかもしれないが…。
冗談はさておき、書店で読者との出会いを待っている本の置き場を、タイトルのなかの特定の言葉だけで決めるのではなく、内容面で決めていただければと切に願う。書店の方への欲ばりなお願いだが、本書は、戦後史の本に関心のある読者の目にとまるところにも置いていただければ、と思っている。
それから、読者のみなさん、お目当てとは違う棚にも、ぜひ足を運んでみてください。そこに思わぬ出会いが待っているのですから。(2005年6月 東谷 護)