更年期
日本女性が語るローカル・バイオロジー
ENCOUNTERS WITH AGING

判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 496頁 |
定価 | 6,160円 (本体:5,600円) |
ISBN | 978-4-622-07161-7 |
Cコード | C0047 |
発行日 | 2005年9月16日 |
備考 | 現在品切 |

ENCOUNTERS WITH AGING
判型 | A5判 |
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頁数 | 496頁 |
定価 | 6,160円 (本体:5,600円) |
ISBN | 978-4-622-07161-7 |
Cコード | C0047 |
発行日 | 2005年9月16日 |
備考 | 現在品切 |
近年、更年期を、閉経以降の女性ホルモン“欠乏”と関連づけられている西洋医学的概念「メノポーズ」と基本的に同一視し、医療化する趨勢が強まっている。著者は、医療化が始まる直前の80年代に、当時更年期に該当していた日本女性を対象として医療人類学的調査をおこなった。そこでは意外にも、北米で言うメノポーズと日本の更年期との間に、身体症状の明白な違いがあることが示された。著者は〈語り〉の分析をとおして、「メノポーズ=更年期」という図式や、「暇人の病」など、更年期に絡みつく神話をねばり強く解体してゆく。
本書がとりあげている“昭和一桁”世代の女性の語りから浮かび上がるのは、混乱期に生まれ、世界観の激変の中をひたむきに生きてきた女性たちの個人史、そしてあくまでその個人史と結びついた「更年期」の自覚症状の出現である。著者は「異常とされるのは更年期自体ではない。……更年期は圧倒的に社会的なカテゴリーなのである」と指摘する。
更年期というカテゴリーの独自性を十二分に示したのち、後半で著者は、「もし更年期を日本の歴史と文化の産物と見るのなら、なぜメノポーズを西欧文化の産物と考えてはいけないのだろうか?」と問いを逆転させる。そして西洋の医学史・文化史をたどる周到な議論によって、「メノポーズ」という概念から“生物学的普遍性”の御墨付きを引き剥がすのである。これを受けて最終章は、メノポーズに対するホルモン療法のリスク‐ベネフィットを再考し、治療方針に関する具体的な提言をおこなっている。この事例はまた、ローカル・バイオロジーの視点からの西洋医学的治療のリスク‐ベネフィットの再検討という、普遍的な課題の存在を示唆している。
日本語版まえがき
プロローグ
第1部 日本——成熟と更年期
第1章 人生の変わり目——定まらない定義
第2章 確率からみた更年期
第3章 あきらめ、抵抗、満足——成熟という語り
第4章 現代の病理
第5章 揺れるしつけと病む家族
第6章 怠惰な専業主婦という幻想
第7章 規格から外れた女たち
第8章 自己統制と身体調整
第9章 ありきたりの発言の裏にあるもの——抵抗という儀礼
第10章 更年期を治療する
第2部 「回避すべき時期」から「欠乏症」へ
第11章 メノポーズはどのようにつくられたか
第12章 自然=本性に反して——メノポーズは老いと衰えの前触れ
エピローグ
謝辞
原註
訳者あとがき
参考文献
索引
女性の老いをありのまま見つめるとは、まさにこういうことではないでしょうか。更年期とは、文字通り絡みあった心と体が老いと出会い、受け入れる過程であることを、単なる机上の理論ではなく具体的な現象の記述の積み重ねによって教えてくれる本。