みすず書房

「〈芸術人類学〉の企ての基礎をなしているのは、私が数年前から展開してきた〈対称性人類学〉という、ヒトの心の働きを探求するための新しい方法である。心の働きのおおもとの部分に、論理的矛盾を飲み込みながら全体的な作動をおこなう〈対称性〉と呼ばれる知性の働きを据えることによって、宗教から経済、科学から芸術にいたるまでの広大な領域でおこっている心の活動を、一貫した視点から再編成しなおしてみることを、この新しいサイエンスはめざしている。しかも私たちのめざしているのは実践的なサイエンスの構築である」(「はじめに」より)

『カイエ・ソバージュ』全五巻や『アースダイバー』で到達した「対称性の知性」をさらに発展させ、レヴィ=ストロースの構造人類学とジョルジュ・バタイユの非知の思想を横断的につないでゆく未曾有の試み。先史時代に花開いた洞窟壁画から縄文土器に表現された造形的思考へ、さらには山の宗教で顕わにされた自然智から西田幾多郎・田邊元が大成したヤポネシアの哲学まで。華厳経とマトリックス的思考、数学と精神分析、友愛と自由に満ちた歴史学の構想など、来るべき野生のサイエンスの全体像が提示される。

目次

はじめに

I 芸術人類学
芸術人類学とは何か
芸術人類学への道

II 神話的思考
『神話論理』前夜
補論・神話公式ノート
公共とねじれ
十字架と鯨  附・ユーカラ

III イデアの考古学
日本哲学にとって「観念」とは何か
神と幻覚
マトリックスの論理学
山伏の発生

IV 歴史との再会
壺に描かれた蛙——考古学と民俗学を結ぶもの
友愛の歴史学のために

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