トラウマの声を聞く
共同体の記憶と歴史の未来

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 264頁 |
定価 | 3,080円 (本体:2,800円) |
ISBN | 978-4-622-07218-8 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2006年6月22日 |
備考 | 現在品切 |

トラウマの声を聞く
判型 | 四六判 |
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頁数 | 264頁 |
定価 | 3,080円 (本体:2,800円) |
ISBN | 978-4-622-07218-8 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2006年6月22日 |
備考 | 現在品切 |
語れば語るほど、戦争の本質は見えなくなっていく。それは言葉が足りないからでも、洞察力の不足でもない。言葉を重ねるその裏に、共同体のトラウマが潜伏しているからだ。
身体に受けた傷を意味した「トラウマ」という言葉を、フロイトは「心の傷」として、精神医学の用語に転用した。トラウマ記憶は、出来事が起きている最中には記憶として登録されず、時を経てから症状として回帰する。この不思議なメカニズムは個人の心にのみ起こることなのだろうか。
本書はトラウマ概念を起点にして、国家や共同体が抱えもつ、集団のトラウマへと考察を広げていく。戦争、核、ジェノサイド……それらは歴史にどのように書き込まれ、忘却され、そして回帰するのだろうか。フロイト『モーセと一神教』、メルヴィル『白鯨』などのテクストを縦横に論じながら、共同体に潜在するトラウマの根深さに迫っていく。
精神分析の知見を現代を考える思考の道具として使い、批評の新たな地平を拓こうとする本書は、今起きている戦争をなおも忘れようとする世界への切迫したメッセージである。