みすず書房

ラシーヌ論

SUR RACINE ET CRITIQUE ET VERITE

判型 四六判
頁数 384頁
定価 5,940円 (本体:5,400円)
ISBN 978-4-622-07234-8
Cコード C0098
発行日 2006年10月10日
備考 現在品切
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ラシーヌ論

1963年に刊行された本書で、バルトは、フランスの文学制度の頂点に位するラシーヌ悲劇について、今日の言葉(精神分析学、文化人類学、構造主義、一般言語学)による「神話破壊」を企て、「今日ラシーヌを読むとはどのような作業か」を見事な《批評的言説》によって解き明かした。

歴史的実証主義を核とする文学研究の限界を暴き、「開かれた意味作用」の地平にテクストを解き放つその企ては、大学人の一部に強い反発を招き、ソルボンヌ大学教授レーモン・ピカールとの間で論争となった。

文学における構造主義の担い手として、「闘うバルト」の言説パフォーマンスがひときわ冴えた書物である。

目次

前書き

第一部 ラシーヌ的人間
I 構造
《奥の間》/外界の三つの空間——死、逃走、事件/原始遊牧民/二つの《エロス》/惑乱/エロス的「場景」/ラシーヌ悲劇の《明暗法》/根底的な関係/攻撃の手法/無名の主語《on》/分裂/《父》/逆転/《罪過》/ラシーヌ的英雄の「独断論」/解決の粗描/腹心の部下/記号の恐怖/《ロゴス》と《プラクシス》
II 作品
ラ・テバイッド/アレクサンドル/アンドロマック/ブリタニキュス/ベレニス/バジャゼ/ミトリダート/イフィジェニー/フェードル/エステル/アタリー

第二部 台詞としてのラシーヌ

第三部 歴史か文学か

解題

読売文学賞(研究・翻訳賞)受賞

本書の邦訳により、渡辺守章氏は第58回(平成18年度)読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞されました。
選評に「R・バルト『ラシーヌ論』は、フランスの文学批評、文学研究の伝統に、大本(おおもと)からの転位をもたらした画期的な業績のひとつである……刊行から四十数年、文学の枠を越えて、ひろく文化史あるいは精神史において占める位置まで見通せるようになったところで、最良の訳者による立派な邦訳が出たのは本当に喜ばしい……」(菅野昭正)。選考途上、長年のラシーヌ研究が背景にあればこその仕事、と、訳文のみならず詳細を極めた注釈、巻末100ページに及ぶ「解題」もが高く評価されたといいます。
なお渡辺守章氏は同年度、ポール・クローデル『繻子の靴』の翻訳で毎日出版文化賞と日本翻訳文化賞をも受賞されました。

書評情報

渡辺保
毎日新聞2007年4月15日(日)