みすず書房

流産の医学

仕組み、治療法、最善のケア

COMING TO TERM

判型 四六判
頁数 400頁
定価 3,300円 (本体:3,000円)
ISBN 978-4-622-07301-7
Cコード C0047
発行日 2007年5月23日
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流産の医学

流産について最新の正確な情報を集め、医療関係者はもちろん、流産に悩むカップルに役立つよう、わかりやすく報告した一冊。流産はなぜ起こるのか。どのような治療的介入法があり、それぞれどんな場合に効果が期待できるのか。妊婦にとって最善のケアとは?
そういった基礎知識に加え、流産の克服に取り組んだ多彩な事例・体験談が盛り込まれており、くりかえす流産に遭遇してどういう選択をすべきか考える際に、具体的に参考になる。すでにひととおりの知識を得たうえでなお、疑問や不安、フラストレーションを感じている人にとっても、一歩進んだ理解と納得につながる内容だ。
著者はパートナーとともに四回の連続流産を経て息子を迎えた経験をもつ科学ジャーナリストであり、患者の側に立った視点と、科学的客観性を兼ね備えた類例のない本を書き上げた。解説に「治療にあたっている多くの医師にとってもきわめて得るものが大きい」とあるように、流産研究の現状や新知見について知りたい専門家にとっても読みどころは多いだろう。
どれほど医学が進歩しても、流産にはままならない部分が残る。だからこそ、当事者にとって真に力になりうる理解の仕方を、著者は問おうとする。これは、単なる知識や体験談の集積にとどまらず、先入観を排して流産の本質をとらえなおす真摯な試みでもある。

目次

推薦の辞
I 母なる自然
 1 生育不能
 2 スライドガラスにとらえられた流産
 3 問題のある卵
II 謎
 4 母体が胎児を拒絶する?──リンパ球免疫療法
 5 ねばねば血液と流産の関係
 6 生命のサイクル
 7 「流産予防薬」DESがもたらした悲劇
 8 風変わりな子宮──子宮奇形、頸管無力症、子宮筋腫
III 希望
 9 環境因子は流産を引き起こすか?
 10 流産専門医のケア
 11 奇跡の子
謝辞
解説
訳者あとがき
用語集
原注
索引

編集者からひとこと

医療分野において「長い間放置されてきた」といわれる流産について、いま何がわかっているのか、当事者および医療者に何ができるのか、その最新事情がわかる本がやっと出ました。流産についての、これまでになく充実した、信頼できる情報源です。

本書は、流産についてのさまざまな誤解を解消する本でもあります。原因不明な場合が多い流産ですが、それでも当事者が「私が妊娠中に、ああしていたのがよくなかった?」「あのときの精神的ショックと関係が?」と自分に原因を探す必要はまったくありません。なぜ妊娠中の行動や精神状態との関連を疑う必要がないのかも、本書が徹底的・科学的に解き明かしています。
実は全妊娠の31%以上が流産に終わるというデータもあり、一般に考えられている以上にひんぱんに起こっている流産。だから、流産がたまたま連続して起こることもまれではなく、くりかえし起こる流産に対処するには、対処法を絞り込むための正しい知識とサポートが肝心です。

本書は二つの面で、教科書的な知識をなぞるだけではない、一歩踏み込んだ内容です。一つは、現時点で流産の何がわからないのか、あるいは、真偽のグレーゾーンにある知識や治療法は何かといった、流産をとりまくモヤモヤした霧の正体までも明らかにしていること。もう一つは、実際にくりかえし流産を経験した女性・カップルや流産専門医の「語り」を通して、知識や一般論だけからは得られない、「肌で学んだ智恵」の部分をカバーしていることです。特に治療法の選択については、当事者の抱えるさまざまな生活事情と切り離せない問題だけに、実例が教えるものは大きいでしょう。
著者自身、パートナーとともに四回の連続流産を経験した科学ジャーナリスト。患者の側に立った視点と、厳密な科学性を兼ね備えている点で、無二の書である本書をぜひ役立ててください。