みすず書房

林立する超高層ビル群の下、都心の日常はなんだかおかしい。路地には乳房そっくりの花を咲かせた「ヒトデナシ」(?)。カレーの匂いが漂うやたちまち姿を現し駆け抜けてゆく「消防団」。平均年齢76・56歳、パジャマ姿の老人ばかりが憩う「ホホエミ食堂」。東京ウォールの汐留シオサイト一帯は、色あざやかな熱帯植物に覆われて、ビルも人もくにゃくにゃ曲がり出す。そのほか背丈20センチ足らずの凶暴ゴジラ、用途不明のロボット、わがままで酒好きの飛べないデブ天使も続々と登場。ちょっとウツな「私」の前に春夏秋冬、四季おりおりに開き出される異界の時空間。いや、ついには季節そのものも乱れ出して「私」は…。ユーモアたっぷりブラック満載——『闇のなかの石』(伊藤整文学賞)『群衆』(読売文学賞)『日光』の著者が放つ前代未聞の連作掌篇小説、全41篇。

目次

アカンベー/ホホエミ食堂/ラブレター/そっくりな他人/ヒトデナシ/
みんな待っている/琉金/落書き/ゴキブリ/ウミ、ドチデスカ/
球体住居/落とし穴/素晴らしき伝説/猫風船/蝉/小さなゴジラ/
とてもセクシー/指人形/ヒノハナ/烏たち/筋肉隆々/
ロボット売ります/陽気な三人/座敷のイロハニー/蟻/
天使のくせに/カレー味の消防団/平和ですなあ/破れ太鼓/
大事なもの/プチ家出/冬眠/風邪はひけない/泣き虫サンタ/
節分/動物園に行こう/花見の女/ポロポロ落ちる/
誰もが眠る日/新住民/万物創生