みすず書房

「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」と、萩原朔太郎は歌った。遠いからこそ魅力的に映ることがあり、好奇心に駆られて近づきたくなる。ぼくにとっては、翻訳作業が究極の接近で、日本語の詩と向き合って呼吸を合わせ、ふたりで英語の大ホールへと踊り出す。最初のぎこちなさを乗り越え、ステップの練習を重ねるうちに、詩はだんだんとパートナーのぼくを離れ、やがて自分ならではのダンスを繰り広げる。……この本に登場を願った26人の作品は、どれも現代と直結している。様子もやり方も違う世界の産物に感じられても、耳を澄ませば今の暮らしに迫って、語りかけてくる。ぼくが添えた英訳とエッセイが、原作の新しさに気づくきっかけとなれば幸いだ。(「まえがきにかえて」より)

目次

過去という名の外国  まえがきにかえて

萩原朔太郎
山村暮鳥
山之口 貘
茨木のり子
石原吉郎
中原中也
高田敏子
小熊秀雄
菅原克己
竹内浩三
岩田 宏
まど・みちお
与謝野晶子
高村光太郎
石垣りん
高木恭造
鶴 彬
堀口大學
柳原白?
金子光晴
三井ふたばこ
中村千尾
壺井繁治
大塚楠緒子
黒田三郎
室生犀星

出典一覧
図版一覧

書評情報

金子兜太(俳人)
毎日新聞2010年4月4日(日)
AJALT
2017年6月