谷中、花と墓地 電子書籍あり

判型 | 四六変型 |
---|---|
頁数 | 208頁 |
定価 | 2,640円 (本体:2,400円) |
ISBN | 978-4-622-07391-8 |
Cコード | C0095 |
発行日 | 2008年5月16日 |
電子書籍配信開始日 | 2013年4月1日 |
備考 | 現在品切 |

判型 | 四六変型 |
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頁数 | 208頁 |
定価 | 2,640円 (本体:2,400円) |
ISBN | 978-4-622-07391-8 |
Cコード | C0095 |
発行日 | 2008年5月16日 |
電子書籍配信開始日 | 2013年4月1日 |
備考 | 現在品切 |
「どの国においても、墓地は美しい。東京の墓地も例に漏れない。しかし、私の見た限りでは、ほかの国では見られない特色がいくつかある。第一は、花の季節になると町中でもっとも賑やかな場所となることである。まるで盛り場。死者と生者が交流して花を楽しんでいるといった感じである。日本人ではないから、これは神道の影響であるといった差し出がましいことは言えないのであるが、なにかそういう関連があるような気がする。アメリカの開拓時代にも、亡くなった者を裏庭に埋葬する習慣があった。幾分似ているような気がする。とにかく桜の花の満開の時は、賑やかな谷中墓地は独り歩きに理想的な場所であった。
……
町を散歩するとき、昔から金のたっぷりある界隈よりあまり裕福でない所の方が好きである。谷中の墓地の中でもっとも惨めな墓は、高橋お伝のものであろう。墓地の端っこの公衆便所のそばで今にも滑ってなくなりそうな感じである。私はここが大好きで、側に立ってお伝の顔を想像して、ご苦労さまと言いたくなる」
東京は湯島に住みなして、三社祭の見世物化を憂い、四季の桜・藤・朝顔を愛でながら、浮世を眺め暮らす。古今の日本文化を味得したアメリカ生まれの文人による極上の随筆34篇。
I
春の渡り鳥/藤三題/夏の下町/薪能
「都市」の川を楽しむ/谷中、花と墓地/朝顔の夏
II
独立記念日の戦争/山の手と下町/下町取材綺譚
蛙——私のコレクション/脚/男の礼服/昔馴染み
「日本」/「神の国」の翻訳/杖つきながら…
鍵の国・塀の国/記憶/片仮名/日本人と傘
喫茶店礼賛/年をとる
III
寄席/小津映画/モーツァルト/谷崎先生の手紙
川端家のマダ/桃紅先生のこと/『源氏物語』私見
草田男の一句
IV
花子/花子 その2/別離(花子 その3)