みすず書房

エレニの罹病と隔離、そして死。第二次大戦終結後のクレタ島で、のこされたふたりの娘たちは、それぞれの運命を生きてゆく。欲するものすべてをその手におさめることを願い、結婚によって富裕な階層への上昇をはたした姉アンナ。老いた父のそばで薬草をあつめて人に癒しをもたらし、日々の手仕事に自分の居場所を見いだしてゆく妹マリア。やがて、マリアは母とおなじハンセン病に冒され、スピナロンガ島へと渡るが、そこで彼女が見たものは、母がいた時代に幕をあけた、患者たちの力強い自治、患者の人権を確保した医療体制の実現に持てるすべての力をそそぐ医師たちの姿だった。
病気への偏見と差別からおきた全島焼き討ちの危機を乗り越え、新薬によってついに完治して、マリアたち元患者は島をあとにして本土のプラカ村へ帰ってゆくが、その夜、思わぬ悲劇がアンナを襲い、アンナの幼いひとり娘ソフィアの運命もいやおうなしに押しながされてゆく……
母ソフィアの封じられた過去を追って呼びさまされた、ヒロインの前につらなる三代にわたる女たちの物語。刊行後、時をおかず世界20数カ国語に翻訳され、鳴りやまぬ喝采をあびた壮大なスケールの物語が完結。