みすず書房

神経ガス戦争の世界史

第一次世界大戦からアル=カーイダまで

WARS OF NERVES

判型 A5判
頁数 440頁
定価 7,150円 (本体:6,500円)
ISBN 978-4-622-07413-7
Cコード C0031
発行日 2008年10月10日
備考 現在品切
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神経ガス戦争の世界史

大量破壊兵器と称される核・生物・化学兵器のうち、最も広範に使用された化学兵器。本書はその化学兵器のなかで最強の、神経ガスの歴史を包括的に記した類のない書である。
神経剤は大戦間期のドイツで開発された。第二次世界大戦では実戦使用を免れたが、冷戦期の国際的な化学兵器開発競争によって製造技術は拡散。北イエメン内戦においてはエジプトがホスゲンやマスタードを、イラン—イラク戦争とクルド人弾圧においてはイラクが神経剤を使用した。今日では、化学兵器がテロリストの武器となることが懸念され、その最初の事件は他ならぬ日本で起きた。オウム・サリン事件は本書でも一章を割いて詳述されている。
化学兵器廃絶の第一人者である著者は、一次資料等の博捜と関係者への聞き取り調査によって本書を書き上げた。化学兵器は核兵器に比べて製造と使用へのハードルが低い分、その歴史には各国の剥き出しの利己主義が色濃い。神経ガスというものを縦軸にした歴史の面白さに驚かされるだろう。また本書は、まとまった知識を得にくい化学兵器について知るうえでも、貴重な一冊と言える。

目次

プロローグ——生剤訓練
第1章  戦争の化学
第2章  イーゲー・ファルベン
第3章  邪悪な科学
第4章  神々のたそがれ
第5章  略奪合戦
第6章  開発研究
第7章 増大する備蓄量
第8章 化学兵器競争
第9章  有毒剤
第10章  北イエメン内戦とその後
第11章  スカル・ヴァレーでの事故
第12章  新たな恐怖
第13章  二種混合型の開発競争
第14章  静かな広がり
第15章  平和と戦争
第16章  内部告発者
第17章  東京の地下鉄で
第18章  新たな脅威
エピローグ——廃棄に向けて

謝辞
訳者あとがき
原注
参考文献・記録文書所蔵館・著者による聞き取り調査
索引

書評情報

常石敬一(神奈川大学教員・科学史)
図書新聞2009年1月24日

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