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自己変革するDNA

著者
太田邦史

遺伝子の本体であるDNAは「生命の設計図」にたとえられてきたが、じつは不変の静的な存在ではない。近年、遺伝子の配列を変えずにその発現を制御する「エピゲノム」のさまざまなはたらきが明らかになった。
本書はそうした研究の先に、《DNAの自己変革能》を提起する。DNAは環境に応じて自らをしなやかに書き換えている。「組換え」や「複製」などの変異をすすんで起こす性質を化学的構造に内蔵しているのだ。
この視点からは、変異のしくみ、寿命や老化をコントロールする要因、がんが《DNAの自己変革能》の暴走状態であることなどが新たに見えてくる。
さらにダーウィン以降の進化論では「獲得形質は遺伝しない」はずであったが、DNA配列の変化に伴い、「環境が子孫のDNAに影響する」ことが分子レベルで示される。
遺伝子組み換えを専門とする研究者が分子生物学・生態学の新しい領野を拓く。DNAに刻まれた、多様性と適応性を求めてたえず変化する生物の戦略は、人間社会にも重なってくるだろう。


目次


はじめに
第一章 二重らせんの秘密――「変化」を内包するDNAの構造
1 DNAは紐である
2 RNAとタンパク質

第二章 DNAの代謝
1 複製
2 修復
3 組換えと有性生殖
4 DNAの自己変革能から見たがん

第三章 ゲノムDNAのプラットフォーム――DNA
1 染色体の構造
2 性染色体
3 染色体末端 テロメア
4 染色体分配の要 セントロメア

第四章 クロマチン、エピゲノムとDNAの自己変革能
1 後天的遺伝のしくみ
2 エピゲノムと生命現象
3 エピゲノムと病気
4 獲得形質は遺伝するか
5 環境とDNA
6 エピゲノム修飾を調節して遺伝子をつくり出す

第五章 生命の多元性と社会
1 DNAが目指すのは「最高効率」ではない
2 複雑系と共生

あとがき
典拠


著訳者略歴

太田邦史
おおた・くにひろ

1962年東京に生まれる。85年東京大学理学部卒業。90年同大理学系研究科生物化学専攻博士課程修了。理学博士。91-2006年、理化学研究所研究員。07年から東京大学大学院総合文化研究科教授。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

目次(詳細)

はじめに
第一章 二重らせんの秘密――「変化」を内包するDNAの構造
1 DNAは紐である
生物は細胞からなる/生命情報の紐/メンデルの幸運/データからモデル構築へ/遺伝情報を伝える物質/DNAの化学的性質/ワトソン・クリックの塩基対/相補性/二重らせん構造/DNAはなぜ遺伝情報の担体となりえたのか/「DNAもどき」を合成してわかったこと/しなやかなDNA/DNAエンジニアリング/有性生殖と分散コンピューティング/DNAとチューリング・マシン
2 RNAとタンパク質
不安定なRNA/シナリオと役者/タンパク質はアミノ酸の鎖/タンパク質と酵素活性/生命情報の流れ――セントラル・ドグマ/遺伝子発現と転写/タンパク質をコードしないDNAの秘境/非コードDNA領域の転写/核酸からタンパク質への転換――翻訳/タンパク質の合成工場「リボゾーム」/レトロウイルスと逆転写

第二章 DNAの代謝
1 複製
半分ずつコピー/岡崎フラグメント/複製のしくみ/細胞周期/複製起点(オリジン)/有糸分裂のしくみ/DNA複製と細胞周期の同調/複製の「ご・いち・に・さん」
2 修復
複製の校正/ミスマッチ修復と家族性大腸がん/紫外線とDNA/ヌクレオチド除去修復/哺乳類が失ったDNA修復系/損傷を乗り越えて/鋳型を切り替える/エネルギー代謝とミトコンドリア/ミトコンドリアのATP合成/ミトコンドリアと活性酸素/活性酸素によるDNA損傷と細胞老化/脱アミノ化/放射線によるDNA損傷/毒ガスとがんの薬/抗がん剤で抜けた毛髪は生えてくるか/自殺酵素/切れたDNAをつなぐ/コピー数変動
3 組換えと有性生殖
相同組換えによる修復/相同組換えの抑制/有性生殖と無性生殖/有性生殖のメリット/「マラーのラチェット」/「赤の女王仮説」/アフリカ眠り病に見る抗原変異/ソフトウェア界の軍拡競争/「ハプスブルクの下唇」/組換えは偶然に起こる現象ではない/組換えと複製の連係/組換えのホットスポット/減数分裂期のDNA二本鎖切断/コピー・ペースト型の組換え/遺伝子変換の役割/染色体の部分的交換=交叉型組換え/キアズマ形成の謎/組換え中間体「Dループ」
4 DNAの自己変革能から見たがん
DNAを軸方向に引き延ばす/DNA構造は「自己変革能」を内蔵する/変化するDNAとがん/がん遺伝子とは何か/がん抑制遺伝子ががんを引き起こす/DNAの異常増幅と分子標的抗がん剤/変化するDNAと抗がん剤耐性

第三章 ゲノムDNAのプラットフォーム――DNA
1 染色体の構造
クロマチン構造/変化する染色体の数
2 性染色体
性の決定/Y染色体に刻まれた歴史/ユダヤ祭司職のY染色体
3 染色体末端 テロメア
染色体のアキレス腱/不老不死のDNA酵素/組換えによるテロメア維持/テロメアのない環状染色体/テロメアが保護されるしくみ
4 染色体分配の要 セントロメア
均等分配のしくみ/セントロメア領域の反復配列/ネオセントロメア/姉妹を結びつける絆――コヒーシン/姉妹の絆を護るシュゴシン/コヒーシンの多様な役割/「チップ・チップ」/コヒーシンがDNA組換えの場所も決める

第四章 クロマチン、エピゲノムとDNAの自己変革能
1 後天的遺伝のしくみ
ヒストンの化学修飾/ヘテロクロマチンとユークロマチン/ハエの眼のまだら模様/ヒストン暗号(コード)/DNAのメチル化
2 エピゲノムと生命現象
X染色体の不活性化と三毛猫/父と母のどちらの遺伝子を使うか/CGアイランド/エピゲノムと分化・発生/マークをつけて使い方を記憶/エピゲノム制御でiPS細胞をつくる
3 エピゲノムと病気
双子とエピゲノム/生活習慣病とエピゲノム/エピゲノムを初期化する薬/寿命をコントロールする物質/記憶とエピゲノム
4 獲得形質は遺伝するか
ラマルク説が甦る?/「太り体質」を打ち消す/「親の因果が子に報い」/メタ遺伝情報
5 環境とDNA
DNAの暴走を制御するクロマチン構造/クロマチン「パトロール」モデル/エピゲノムによるDNA組換え制御
6 エピゲノム修飾を調節して遺伝子をつくり出す
DT40細胞を用いた染色体工学/DT40の抗体遺伝子再編成/研究には先立つものが必要……/新しい抗体遺伝子を生み出す/組換えと突然変異の長所と短所

第五章 生命の多元性と社会
1 DNAが目指すのは「最高効率」ではない
有性生殖とDNA再編成/堅牢性を実現する多様性/「うまく行きすぎる」のは危険/働き者二割の法則/生物の二大生存戦略/インフレとデフレ
2 複雑系と共生
変化し続け、多様であり続ける/一定の枠組みの中での自己革新/変わらないものと変わるもののモザイク/多様性の確保と生存競争は両立するか/複雑系共生システム/共生を重視した人類社会/たとえば、江戸時代の庶民文化/個の多元性の確保/無限なる「他者」との関係性

あとがき
典拠

書評情報

大谷卓史(吉備国際大学)
<:Medical Bio(オーム社)2011年3月号>
山形浩生(評論家)
<2011年12月25日(日):朝日新聞>

関連リンク

この本の関連書


「自己変革するDNA」の画像:

自己変革するDNA

「自己変革するDNA」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/248頁
定価 3,024円(本体2,800円)
ISBN 978-4-622-07583-7 C1045
2011年1月20日発行

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