みすず書房

「1968年は全てを変えてしまった年ではなかった。それまでにあまりにも多くのことがすでに進行しつつあった。だが〈68年〉以後はほとんど何ひとつもとのままではなくなった」

なぜ学生が、なぜこの時点で、なぜ事実上西欧世界のいたるところで反乱を起こしたのか? 「ベトナム戦争反対」という共通軸が結果としてあり、運動の形態は似ていても、原因や動機は各国ばらばらであった。大学の管理主義への不満や様々の偶然から生じたフランスのパリ68年5月、シット・インなどの抵抗運動を雛型とした黒人運動に起因するアメリカ、ナチズムという克服されざる過去の問題と対峙したドイツ、60年安保以後の左派の分裂、反米闘争、学費値上げ反対などが絡まった日本、工場労働者と結びついたイタリア、ユニークな形態を示したオランダ、ポップカルチャーの興隆を背景としたイギリス、そしてチェコ、ポーランド、東ドイツ……
本書は各国の詳細な分析を通し、縦軸と横軸、その可能性と限界を説得的に描く。〈1968年〉を世界史の中で位置づけた、現代史家による最も評価の高い書。

目次

パリ、1968年5月

1章 はじめにはアメリカがあった
グリーンズボロ——公民権運動の端緒
バークレー——フリー・スピーチ・ムーヴメント
ベトナム——抗議のグローバル化
ヘイト・アシュベリー——カウンターカルチャーと喜びの多様化
コロンビア——急進化と運動の崩壊

2章 ドイツ固有の道?
抑圧の子どもたち——ナチズム批判の精神から生まれた世代
フランクフルトのニュー・レフト——民主主義の緊急事態
ベルリンの勃興——自由な大学の本質について
67年——本当とは思えない年
新たな生活感情——運動のもうひとつの意味について
終焉と末期の歌——反乱の急速な収束

3章 西側世界での抗議運動
日本——不可解な反乱の暴力の核心について
イタリア——急進化とテロの競合
オランダ——プロフォとカバウテル
イギリス——セックス、ドラッグそしてロックンロール

4章 東欧での運動
チェコスロヴァキア——打ち砕かれた希望の夏
ポーランド——反ユダヤ主義のいかさま
ドイツ民主共和国——ビート音楽に振り回された監視者

5章 なんだったのか、なにが残ったのか
「68年」の理念
ドイツ連邦共和国の総決算

原注
あとがきと謝辞
訳者あとがき
訳注

文献抄録
索引

書評情報

桜井哲夫(東京経済大学教授)
日本経済新聞2012年6月3日(日)
市田良彦(神戸大学教授)
週刊読書人2012年6月1日
鹿島茂(フランス文学者)
週刊文春「文春図書館」2012年7月5日号
佐々木中(作家、哲学者)
図書新聞2012年7月14日(土)
出版ニュース
2012年7月
小山貴之
朝日新聞(別刷特集)2012年12月7日
白川耕一
歴史学研究第910号(2013年)

関連リンク