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ヘイト・スピーチという危害

THE HARM IN HATE SPEECH


多くの民主主義国家がヘイト・スピーチを規制する法律を持つ中で、アメリカは日本と同じく法的規制がない数少ない先進国である。言論の自由の法的保護の下、ヘイト・スピーチも保護の対象とされている。では、ヘイト・スピーチの標的にされた人々は我慢すべきなのだろうか。そして、ヘイト・スピーチの標的にされていない人々は無関係なのだろうか。
そうではない。ヘイト・スピーチは社会の基盤に重大な危害を与えるものである。ヘイト・スピーチは、標的とする人々の社会的地位を普通の市民以下に引き下ろし、尊厳を危うくすることを意図する。ヘイト・スピーチは尊厳を攻撃することで、社会の基盤にある「安心」という公共財を掘り崩してしまう。
では、ヘイト・スピーチ規制と言論の自由を両立するためにはどうしたらいいか。そのポイントの一つが、尊厳と不快感との峻別である。ヘイト・スピーチ規制は、不快感から守るためではなく、個人の尊厳を守るためになされるのでなければならない。
本書は、日本と同じくヘイト・スピーチ規制のないアメリカの議論や判例を紹介し、ヘイト・スピーチの定義、その問題点、法的規制の根拠、そしてヘイト・スピーチの「危害」を明らかにする。ヘイト・スピーチ規制を考える上での必読の書。


目次


第一章 ヘイト・スピーチにアプローチする
尊厳と安心/二つの書評の物語/私の控えめな意図

第二章 アンソニー・ルイスの『敵対する思想の自由』
 
第三章 なぜヘイト・スピーチを集団に対する文書名誉毀損と呼ぶのか
「ヘイト・スピーチ」の意味/集団に対する名誉毀損/文書名誉毀損の種類/刑事文書名誉毀損と無秩序/個人と集団/集団の評判を攻撃する/ボーハネ事件判決とニューヨーク・タイムズ社対サリヴァン事件判決

第四章 憎悪の外見
秩序ある社会はどのように見えるか/ロールズと言論の自由/政治的美学/秩序ある社会における憎悪と法律/安心/ポルノグラフィとの類比/競合する公共財/明白かつ現在の危険か/法の支配と個人の役割/移行と安心

第五章 尊厳の保護か、不快感からの保護か
尊厳を傷つけることと、不快にすることの違い/複雑性/人種差別主義的罵詈/宗教的憎悪と、宗教的不快感を与えること/分厚い皮膚/アイデンティティの政治のもたらす危難/尊厳の概念は曖昧すぎるのか

第六章 C・エドウィン・ベイカーと自律の議論
言論の自由の原則に対するいくつかの例外/率直な議論を行う/「内容に基づく」規制/思想の市場/切り札としての言論の自由?/エド・ベイカーと自己開示

第七章 ロナルド・ドゥオーキンと正統性の議論
ドゥオーキンの議論/ドゥオーキンの議論は制約されうるか/正統性とは何を意味するか/正統性は程度の問題か/深刻な論争の終結/共同体とデモクラシーについてのロバート・ポストの見解/政府に対する不信

第八章 寛容と中傷
オズボーン事件/寛容の構想/ヘイト・スピーチに関するフィロゾーフの立場/社会性/釈義と発掘/中傷についてのヴォルテールの見解/寛容についての研究文献とヘイト・スピーチについての研究文献

謝辞
訳者解説
原註
索引


著訳者略歴

ジェレミー・ウォルドロン
Jeremy Waldron

1953生まれ。ニュージーランド出身の法学者。現在、ニューヨーク大学ロースクール教授。専門は憲法理論、法哲学、政治理論。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
谷澤正嗣
やざわ・まさし

1967年生まれ。現在、早稲田大学政治経済学術院准教授。専門は政治理論。著書に『新版 現代政治理論』(共著、有斐閣、2012年)、『アクセス デモクラシー論』(共著、日本経済評論社、2012年)ほか。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
川岸令和
かわぎし・のりかず

1962年生まれ。現在、早稲田大学政治経済学術院教授。専門は憲法学。 ...続きを読む »

※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

書評情報

梓澤和幸(弁護士・日本ペンクラブ理事)
<しんぶん赤旗 2015年7月5日(日)>

関連リンク

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「ヘイト・スピーチという危害」の画像:

ヘイト・スピーチという危害

「ヘイト・スピーチという危害」の書籍情報:

四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/352頁
定価 4,400円(本体4,000円)
ISBN 978-4-622-07873-9 C0036
2015年4月10日発行

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