みすず書房

ファルマゲドン

背信の医薬

PHARMAGEDDON

判型 四六判
頁数 480頁
定価 4,400円 (本体:4,000円)
ISBN 978-4-622-07907-1
Cコード C1047
発行日 2015年4月10日
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ファルマゲドン

抗うつ薬が自殺を惹起するという深刻な副作用を暴いた『抗うつ薬の功罪』の著者ヒーリーが、薬物治療依存の時代に産官学を巻き込んで拡大する背信の構造を告発する。なかでも、臨床試験データの隠匿や改竄などの不正操作、医学論文のゴーストライティングの問題を徹底して追及している。そこからは、科学への信頼を逆手にとったマーケティングが、学者や医師のコンセンサスを乗っ取って特許薬の需要をつくりだし、医療と医薬のあらゆる側面が人間よりもその経済に奉仕させられているという、ディストピア的様相が浮かび上がる。
これに対してヒーリーは、濃霧を晴らすような抜本的な改革案を提示している。臨床試験の生データの公開、医薬品の特許制度および処方箋薬制度の見直し、ユーザーが持つ副作用情報のグローバルな集積と活用など──いわば、医薬に関する知識と権限をユーザーに解放し、ボトムアップでディストピアを解体するという構想である。


目次

はじめに
ファルマゲドンの進展
ファルマゲドンを避けるには

第一章 かつて医療と呼ばれていたもの
医療からマーケティングへ
かつてのブランドとこれからのブランド
特許薬
ブランドと特許
情勢の変化

第二章 医療とマーケッター
医師が注文したもの
ブロックバスター薬の台頭
鏡の中の顔
新たな医療

第三章 エビデンスに従え
数字的転回
疾患の原因
医療における肥料?
医者に催眠術をかける
偶然を飼い慣らす
ギャップにご用心
企業がおこなう臨床試験
エビデンスに歪められた医療

第四章 データの改竄
科学を装う
機械の中の幽霊
科学という巣に産みつけられたカッコウの卵
利益相反を超えて
鏡の国のアリス
サイエンス・エクス・マキナ
消える科学

第五章 ガイドラインに縛られて
自由裁量の終焉
コンセンサス会議
一つのガイドライン、一つの声
医学界最大の乖離
企業に掌握された双極性障害のガイドライン
足元の現実問題

第六章 医療の測りまちがい
ケアと測定
標準化された医療
尺度の魔力
帽子の中のウサギ
危険になった世界
非平穏状態を測定する
品質の誘惑
測定を超えて

第七章 翳りゆくケア
治療が悪い方向に向かうとき
オズの魔法使い
最先端のケア
工場医
疑念の支配
専占攻撃
冥界への拉致

第八章 ファルマゲドン
データに基づく医療
処方箋扱いのステータス
RXISKドットコム(RxISK.com)
医薬品の特許
ポストモダニズムの工場
医学的ケアの将来

謝辞
解説
原注
索引

書評情報

日本経済新聞「短評」
2015年5月17日(日)
別府宏圀(薬害オンブズパースン)
Medwatcher Japan2015年11月1日号
野田正彰(評論家・精神科医)
熊本日日新聞2015年10月18日(日)