みすず書房

2015年5月に亡くなった詩人が自ら編んだ「最後の詩集」。 『長田弘全詩集』に収められた以降の近作15篇。詩人はつねに陽気であらねばならない、というのが一貫した姿勢だった。
「夏、秋、冬、そして春」「冬の金木犀」「朝の習慣」。これらの詩行に潜む箴言のような一節。 「思うに、歳をとるにつれ/人に必要となるものはふたつ、/歩くこと、そして詩だ。」
身軽に旅をした。2013年に旧友たちと巡ったシチリア島や、ひょいと出かけたフィレンツェ、アッシジなど、晩年に好んだイタリアでの偶景が、ふと気づくと省察になっている。
そして、「One day」という短い詩。「昔ずっと昔ずっとずっと昔/朝早く一人静かに起きて/本をひらく人がいた頃」と始まり「人生がよい一日でありますように」と終わる詩で、この『最後の詩集』は静かに閉じられる。
青い空のようにあくまで明るく、なおかつ深い、75年をまるで一日のように生きた詩人が残してくれた、本の贈り物。
2014年に発表された連作小文「日々を楽しむ」を大橋歩のイラストとともに併せ収める。

目次

「最後の詩集」
シシリアン・ブルー
カタコンベで考えたこと
円柱のある風景
夏、秋、冬、そして春
詩って何だと思う?
冬の金木犀
朝の習慣
アッティカの少女の墓
アレッツォへ
アッシジにて
フィレンツェの窓辺で
ハッシャバイ
ラメント
詩のカノン
One day

「日々を楽しむ」
ネムルこと
探すこと
ドアは開いている
習慣のつくり方
何もしない
お気に入りの人生

書評情報

井上卓弥(記者)
毎日新聞2015年7月1日(水)夕刊
松山巌(評論家・作家)
読売新聞2015年7月5日(日)
信濃毎日新聞
2015年7月12日(日)
倉田茂
詩誌「禾」2016年1月

関連リンク

『最後の詩集』と『長田弘全詩集』

「『長田弘全詩集』は、「全・詩集」として編まれた。新編修による二冊の完成版(definitive edition)をふくめて、これまで公刊された十八冊の詩集を収める。いわゆる「全詩・集」とは異なって、未刊の詩集、エピグラム、これまで未収録の詩篇、はぶかれた詩篇、子どもたちへの詩篇、詩文集、選詩集などは収めない」
(「編集について」)

著者自身がこう書かれたように、『長田弘全詩集』の編集時点で未刊だった詩は、そこには含まれていません。本書『最後の詩集』に、『長田弘全詩集』後の最晩年の詩が収められています。