みすず書房

正義の境界

BOUNDS OF JUSTICE

判型 A5判
頁数 312頁
定価 5,720円 (本体:5,200円)
ISBN 978-4-622-07955-2
Cコード C1010
発行日 2016年2月18日
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正義の境界

「私は本書で、国境はもはや正当な正義の境界として見なしえないと論じる。それ自体が制度である国境の正義は疑われうるものであり、またしばしば疑われるべきものである」

20世紀の最後の30年のあいだ、ジョン・ロールズの『正義論』をその先陣として、「正義」をめぐる著述がかつてないほど盛んになった。人権および戦争の正義、アパルトヘイトと共産主義の終焉、そして第三世界の開発と福祉国家……。これらの議論が次々に正義をめぐる抽象的な著述と結びつけられ、論争の火種となってきた。
本書はそれらの論争を経てもなお未解決のまま残された、正義の「哲学的な境界」と「政治的な境界」に関わる問題を、カントの政治哲学を用いて探求するものである。はたしてポスト・ロールズ時代のカント主義哲学は、われわれの「正義」に何をもたらすのか? そして、ロールズのなしえなかった義務論にもとづくグローバルな正義の構想とは——。
「女性の権利——誰の責務か?」「カントの正義とカント主義の正義」「トランスナショナルな経済的正義」「アイデンティティ、境界、国家」ほか、全10篇。ロールズの弟子にしてイギリスを代表するカント主義哲学者オノラ・オニールの、正義をめぐる思想の全貌。

目次

緒言
序論

第1部 哲学的な正義の境界
第1章 実践的推論の四つのモデル
第2章 行為者性と自律
第3章 原理、実践的判断力、制度
第4章 カントの正義とカント主義の正義
第5章 あなたが拒否できない申し出はどちらか?
第6章 女性の権利——誰の責務か?

第2部 政治的な正義の境界
第7章 トランスナショナルな経済的正義
第8章 正義、ジェンダー、インターナショナルな境界
第9章 アイデンティティ、境界、国家
第10章 遠くの見知らぬ人、道徳的地位、透過的な境界

訳者あとがき
原注
参考文献
索引

書評情報

山内志朗(慶應義塾大学教授)
産経新聞2016年5月15日(日)