映画女優 若尾文子【新装版】

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 352頁 |
定価 | 4,180円 (本体:3,800円) |
ISBN | 978-4-622-07997-2 |
Cコード | C1074 |
発行日 | 2016年4月8日 |
備考 | 在庫僅少 |

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 352頁 |
定価 | 4,180円 (本体:3,800円) |
ISBN | 978-4-622-07997-2 |
Cコード | C1074 |
発行日 | 2016年4月8日 |
備考 | 在庫僅少 |
「若尾文子は日本映画がもっとも頂点に到達したとき、そのまさに頂点に位置していた女優である。彼女は可憐な女学生を演じ、悪の化身として男たちを破滅させる魔性の女を演じ、そして激情に我を忘れる人妻を演じた。」(はじめに)
1950年代から60年代にかけて、日本映画の最盛期に大映の看板女優としてスクリーンを駆けぬけた若尾文子。とくに増村保造監督とコンビを組んだ数々の名作で、みずからの欲望にどこまでも忠実に自己決定を貫くヒロインを演じ、高度成長期の新しい女性を強烈に印象づけた。近年、新たな世代にもブームが到来、『若尾文子映画祭 青春』など再上映であらためて脚光を浴びているこの神話的大女優を、二人の映画研究家が真っ向から論じる画期的な女優論である。
個人の原理である欲望と、共同体を支える民主主義が結合した希有な女優として若尾を位置づける四方田論文、男性の視点から撮られたヒロインが女性をも魅了する〈若尾文子的問題〉を探る斉藤論文に、女優みずからが演技について、監督について縦横に語ったインタビュー、さらに159本にもおよぶ全出演作のフィルモグラフィを付した。
【初版2003年6月25日】
はじめに
欲望と民主主義……四方田犬彦
第1章 監督と女優
第2章 増村保造の日本映画批評
第3章 スター、若尾文子
第4章 『青空娘』から『妻は告白する』まで
第5章 増村保造の女優観
第6章 後期の作品
第7章 欲望と民主主義
女優は抵抗する……斉藤綾子
I 不穏な瞬間
II 文子は告白する
III スターから女優へ
IV 若尾文子の重力
V 愛を身体化する『清作の妻』
若尾文子インタビュー
自分以外の人間になりたい
若尾文子フィルモグラフィー 〔志村三代子・作成〕
あとがき
彼女は氷イチゴのような人だと、三島由紀夫はいった。「彼女は充分に女ですよ。そして俺は充分に男なんだ。もう、いうことはなにもねえよ。」と、山川方夫は書いた。若尾文子のことである。
あらゆる男たちの煩悩をくすぐり、「性典」ものアイドル少女からみごとに女優へと転身した彼女の軌跡は、日本映画史のなかで今でも光り輝いている。
だが若尾文子に魅惑されていたのは、男性だけではなかった。女性もまた彼女に理想的な「お姉さま」の像を仮託し、ブロマイドを壁に貼り、せっせとファンレターを書き送った。信じられないことではあるが、お正月に4万枚の年賀状が到来した年があったという。
『映画女優 若尾文子』は、3つの部分からなる書物である。最初にわたしが、三島由紀夫と増村保造という2人の男の肩越しに、男性の側から見た彼女を論じた。次に斉藤綾子がフェミニズムの立場から、なぜ若尾文子に同性がかくも魅惑されてしまうのかを分析した。最後に完全なフィルムグラフィーを添えた。
若尾文子は、日本映画が撮影所体制のなかでもっとも絢爛豪華なスターシステムを謳歌していた時期に、その頂点にあって活躍していた女優である。本書の勢いを借りて、今度はどこかで写真集を出していただきたいものである。(2003年10月)