みすず書房

みすず書房の本

立原道造 鮎の歌

大人の本棚

著者
立原道造
解説
松浦寿輝
判型 四六判
頁数 256頁
定価 2,640円 （本体：2,400円）
ISBN 978-4-622-08046-6
Cコード C1393
発行日 2004年3月25日
備考 現在品切
文学・エッセイ日本のエッセイ・詩
オンラインで購入
立原道造 鮎の歌

「いつか私は書かうと思つてゐた、出来事の多い物語を。それもなるべくは美しい色どりばかりで、恵みあるあかりの下に読みかへされるならば、意味ふかくあらゆる官能に浄らかな歓喜が湧きおこる。」

ある日風になった青年、アンリエットとその村、吟遊詩人のレクイエム、月のめえるへん、そして鮎と名づけられたひとりの少女との出会いと別れ——26歳で夭逝した立原道造が生前に出版を企てていた物語集が、本書『鮎の歌』である。詩人の没後60余年を経て、初めての普及版としていま蘇る。

「立原道造以外には誰にも模倣できなかったこの詩的奇術が今なお人々を惹きつけてやまないのは、それが何かを隠蔽しようとして行われた手先の小技ではなく、逆に、彼の人生の実存のすべてをそこにあからさまに露呈させている倫理的な決断だったからだろう。」（「解説」より）

そんな美しい奇術にも似た「物語詩」のこころよい甘さに身を浸す悦びを、ここにお贈りします。

目次

かろやかな翼ある風の歌
春のごろつき
間奏曲
生涯の歌

鮎の歌
　メリノの歌／ちひさき花の歌／花散る里／
　鳥啼く夕べに詠める歌／鮎の歌／物語／物語

解説　　松浦寿輝

著訳者略歴

＊ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

立原道造

たちはら・みちぞう

1914年7月30日、東京市日本橋区橘町に生まれる。1931年、第一高等学校に入学。在学中に一高短歌会会員となり、手製の詩集『さふらん』、『日曜日』、『散歩詩集』を制作。1934年、東京帝国大学工学部建築学科入学。10月、第二次「四季」（月刊詩誌）創刊、編集同人となる。1935年、小住宅（課題製図）の設計で辰野金吾賞を受賞。以後卒業まで3年連続受賞する。5月、同人誌「未成年」創刊。1936年11月、シュトルム短編集『林檎みのる頃』（山本書店）を翻訳刊行。12月、卒業論文「方法論」を提出。1937年3月、卒業制作「浅間山麓に位する芸術家コロニイの建築群」を提出。卒業後、石本建築事務所に入社。『鮎の歌』という総題の物語集を構想する。7月、詩集『萱草に寄す』刊行。12月、詩集『暁と夕の詩』刊行。1938年8月、肺尖カタルのため休職し、信濃追分転地療養。詩集『優しき歌』を構想する。12月、長崎に滞在中喀血し、帰京後東京市立療養所に入所。1939年2月、第1回中原中也賞受賞。3月29日、病状急変し永眠。享年26歳（満24歳8か月）。

松浦寿輝

まつうら・ひさき

1954年東京生まれ。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。詩人、小説家、表象文化論専攻。詩集：『冬の本』（青土社、1987）、『女中』（七月堂、1991）、『現代詩文庫　松浦寿輝詩集』（思潮社、1992）、『鳥の計画』（思潮社、1993）ほか。小説：『幽』（講談社、1999）、『花腐し』（講談社、2000）、『巴』（新書館、2001）ほか。評論：『口唇論』（青土社、1985）、『折口信夫論』（太田出版、1995）、『エッフェル塔試論』（筑摩書房、1995）、『知の庭園』（筑摩書房、1998）、『官能の哲学』（岩波書店、2001）ほか。