みすず書房

本の中の世界

大人の本棚

判型 四六判
頁数 216頁
定価 2,750円 (本体:2,500円)
ISBN 978-4-622-08061-9
Cコード C1342
発行日 2005年9月9日
備考 現在品切
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本の中の世界

素粒子および核力についての中間子理論によって、日本人として初めてノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹。その幅ひろい読書体験から生まれた随想を集める。

幼い頃、祖父から授けられた中国の古典への素養が、著者の精神風土を形成した。終生の愛読書「荘子」、墨子や漢詩の世界から、やがて少年時代・青年時代をつうじて興味の赴くままに日本の古典をひもとき、現実世界の外にひろがる別天地をそこに見る。西行、近松浄瑠璃、源氏物語……さらに、物理学者として国外へ出て、アインシュタインはじめ多くの出会いを契機として触れた西洋の書物を語るなかに、その世界観が透けてみえる。

あるときは古典を近代科学の営みに引きつけて読む、心の広がり、自由さ。そのときどきの読書遍歴が、著者の研究や生きかたにおのずと重なり、稀有な物理学者の自然体の姿を伝えつつ、人間の築いてきたゆたかな書物の世界へ誘う。

目次

「荘子」
「墨子」
「文章軌範」
「唐詩選」
「近松浄瑠璃」
「山家集」「伊勢物語」
「近世畸人伝」
「狂言記」
「東西遊記」
「源氏物語」
エピクロス
「ナンセン伝」
エラスムス「平和の訴え」
「ラッセル放談録」
「カラマーゾフの兄弟」
「舞姫」
「海潮音」
「あめりか物語」
「わが世界観」「晩年に想う」
自分の書いた本
付・「ギリシャの自然と天才」
付・「古典と私」

自然は曲線を創り、人間は直線を創る(池内 了)
初出一覧

書評情報

若島正(英文学者)
日本経済新聞「半歩遅れの読書術」2014年6月29日