新編 戦後翻訳風雲録
大人の本棚

判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 264頁 |
定価 | 2,860円 (本体:2,600円) |
ISBN | 978-4-622-08076-3 |
Cコード | C1395 |
発行日 | 2007年6月1日 |
備考 | 現在品切 |

判型 | 四六判 |
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頁数 | 264頁 |
定価 | 2,860円 (本体:2,600円) |
ISBN | 978-4-622-08076-3 |
Cコード | C1395 |
発行日 | 2007年6月1日 |
備考 | 現在品切 |
戦後の混乱のなか、早川書房の「ポケミス」刊行開始は、エンターテインメント出版界の画期的な出来事だった。著者はその仕掛け人のひとりで、現在は翻訳権・著作権の第一人者。
友情に厚く、酒の強かった著者が、濃密につきあい、渉りあった翻訳者や出版人たちは、奇人や破格の傑物にあふれていた。葬式の日に近親者の知らない「夫人」が名乗り出てきたり、花嫁未定のまま式場だけ押さえて招待状を配ったり。本書は、今となっては誰も語れない彼らの列伝・鎮魂歌であり、翻訳出版界の裏面史である。
『戦後「翻訳」風雲録——翻訳者が神々だった時代』(本の雑誌社)の増補改訂版。
はじめに 翻訳者が神々であった時代
詩人
1 天真爛漫 中桐雅夫
2 心の深淵 鮎川信夫
3 細心 田村隆一(一)
4 無頼 田村隆一(二)
奇人
1 底抜けバケツ 高橋豊
2 好奇心 宇野利泰
3 奇矯 田中融二(一)
4 自死 田中融二(二)
児童文学者
凝る 亀山龍樹
編集者
1 赤鉛筆 福島正実(一)
2 醒めた浪漫 福島正実(二)
3 剛直 福島正実(三)
4 生まれ育ち 厚木淳
エージェント
サバイバル・ギルト 三田村裕
ジャーナリスト
1 ムッシュ 新庄哲夫
2 転職 松田銑
大学教員
酔師 斎藤正直
出版者
1 誤解 早川清(一)
2 所有のこだわり 早川清(二)
3 江戸川乱歩 早川清(三)
4 横浜事件潜伏者 桑名一央(一)
5 匿名の翻訳者 桑名一央(二)
終わりに ただ悼む
あとがき
彼らが翻訳した作品には、すでに絶版になっているものも多くある。今後も年を経るにしたがって、絶版にされるものは増えていく。原作そのものは、いずれ陽の目を見ることもあろう。ただ、そのとき、彼らの翻訳が、すべてがすべて生かされるか疑わしい。他が代わって、翻訳するかもしれない。
それが翻訳、翻訳者のまた、宿命であろう。今は、私が出逢い、数々の思い出を残して逝った彼らを、ただ悼むのみである。(「おわりに ただ悼む」より抜粋)
確かに、本書に登場するのは、逸話に事欠かない、人間的な魅力にあふれた傑物たちだ。しかし正直な話、こういう人たちの傍にいるのは、しんどいことでもあっただろう。彼らととことん付き合った著者が「出版界の名物男」(福島正実氏の言葉)であるというのは、言わずもがなと納得する。