みすず書房

ヒステリーの発明 上

始まりの本

シャルコーとサルペトリエール写真図像集

INVENTION DE L’HYSTERIE

判型 四六変型
頁数 288頁
定価 3,960円 (本体:3,600円)
ISBN 978-4-622-08368-9
Cコード C1310
発行日 2014年1月24日
備考 在庫僅少
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ヒステリーの発明 上

「今日われわれに、『サルペトリエール写真図像集』が残されている。すべてがそこにある——ポーズ、発作、叫び、「熱情的態度」、「苦悩」、「恍惚」、あらゆる錯乱の姿態。写真のもたらすシチュエーションが、ヒステリーの幻影と知の幻影との絆を理想的に結晶させたがゆえに、すべてがそこに有るように見える。呪縛の相互作用が定着したのだ。すなわち、「ヒステリー」の映像を飽かず求めつづける医師たち——従順に身体の演劇性を増幅していくヒステリー患者たち。こうしてヒステリーの臨床医学はスペクタクルになった。〈ヒステリーの発明〉だ。それは暗々裡に、芸術にも比すべきものに自らを同一化していった。演劇や、絵画とも紛うものに。」

「サルペトリエール施療院は、いわば女の地獄、苦痛の都だった」。哲学と美術史を横断するディディ=ユベルマンのデビュー作。増補新版(2012年)を元にしてここに甦る。

目次

まえがき

I スペクタクルの明証性
第1章 解放
スペクタクル/発明/狂女たちの解放/美しい魂/偽善/イメージの解放/狂気の結晶体/玩具のモラル/有効性の破綻

第2章 臨床医学の知識
罪の劇場/地獄下り/来てり、見てり/商館—統治権/ヒステリーと命名する/事実を活用する技術/病理学的生命、静物/症状に先取りされた屍体解剖/臨床医学の行使/登場の作劇法/症例/図表/観察、記述/好奇心/一瞥、シャッター

第3章 写真のキャプション
「ここに真実がある」/博物館、現実の代替物/グラフ/「真の網膜」/図像学、予見/どんな些細な欠陥も/様式の誇張/狂気の描線/最初のプリント/映像に熱狂する/サルペトリエール、写真部門/記憶のキャプション/表層のキャプション、顔貌/同一性のキャプションと、その手続き/明証性のパラドクス/正確さ?/人為性!/主体(被写体)?/背反!/類似?/見よ!

第4章 無数の形態の、どれひとつとして
「ここに狂女がいる」/黒い獣/恥部/癒しがたいもの/質料なき病/原因のパラドクス/病巣のパラドクス/スペクタクル的明証性のパラドクス/疑惑——嘘の症状/「存在することに変わりはない」/なおかつ形態を抽出する/シルエットの通過/女たちの特徴

II オーギュスティーヌをめぐる呪縛
第5章 アウラ
顔に準ずるもの/影と遅滞/ポーズ、幽霊、側面性/アウラ、距離の危険/距離の接触/ヴェール、啓示/アウラの図像学/写真の神託/アウラ・ヒステリカ/三つのやま場/隠蔽と異化/方法としての待機療法(「時機を待つ」)/ほぼ不可視の秘密/症状—時間(不可能なる物語)/露出時間/待機/「時間がない」(幕間)/失神(どんでん返し)

第6章 発作とポーズ
古典的タブロー/傑作、オーギュスティーヌ/彫刻的瞬間(拘縮)/死亡税/突出した情動/ヒステリー患者のよじれた視線/たわむれに測量される視線/夢(劇場、火事、血)/幻視/恍惚/地獄の夫/変容した女/快感のポーズ(二重の身体)/わざとらしい身ぶり/原光景、「顔のまんなかに一撃を受けたように」/原光景の抑圧と余波/原光景の転換/原光景のスクリーン/事後性/暴行/執拗にとどまるイマージュ断片(可視性のパラドクス)/装いと気晴らし/パートナーの孤独/虜にするという欲望/呪縛の拘束/「欲望すること—私の栄光」(いかにしてヒステリー患者が主治医を夢中にさせたか)

書評情報

橋本一径(早稲田大学文学学術院准教授)
図書新聞2014年6月14日
福本修(恵泉女学園大学)
精神療法2014年10月