みすず書房

ポチョムキン都市

DIE POTEMKINSCHE STADT

判型 A5判
頁数 336頁
定価 6,380円 (本体:5,800円)
ISBN 978-4-622-08567-6
Cコード C1052
発行日 2017年9月15日
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ポチョムキン都市

「ポチョムキン村を知らない者がいるだろうか? 抜け目なく立ちまわる女帝エカチェリーナの寵臣ポチョムキンがウクライナにつくった村のことである。布と厚紙でできたこの村は、女帝陛下の目を楽しませるために荒野をみごとな風景に変えるという使命を負っていた。だが、ほんとうに村々を全部まるごと変える必要があったのだろうか?
これから語ろうしている〈ポチョムキン都市〉とは、じつはわが愛すべきウィーンのことである。リングシュトラーセをぶらつくと、いつもこんな感情にとらわれる。現代のポチョムキンがこの町を歩く人々に〈じつに洗練された町に来たものだ〉と思いこませようとしているのではないかと」

「私は平面図も立面図も断面図もつくらない。空間をつくるのです」。世紀末に出現した書割都市ウィーンを痛烈に批判した表題作をはじめ、近代建築史上最大の躓きの石にしてラウムプランの提唱者がロースハウス、ミュラー邸、シカゴ・トリビューン本社ビル競技案、グランドホテル・バビロン計画案ほか自作について、オットー・ワーグナー、ヨーゼフ・ホフマンほか同時代の建築家について、さらには家具・工芸品、絵画・映画、モード・立ち居ふるまいにいたるまでジャンルをこえ縦横無尽に語った全45篇(本邦初訳38篇)。日本独自編集によるロース「第三の書」。解題・鈴木了二。図版多数収録。

目次

I 装飾に抗して
ウィーン市のコンペ
ミルバッハ展
皇帝即位記念博覧会のポスタ
スカラの事件(オーストリア博物館と手工業連盟)
展示都市——新しい様式
ワーグナー・シューレ展によせて
ポチョムキン都市
建築における新旧ふたつの動向——ウィーンの芸術動向を特別考慮した両者の比較)
女性と家

II オーストリアに西洋文明を
カッラーラ
婦人クラブの安楽椅子
住居探訪
ミヒャエル広場にある私の建物のファサードに物言いがついた件
ミヒャエル広場の私の建築
立つ、歩く、座る、寝る、食べる、飲むことについて
オットー・ワーグナー
アドルフ・ロース、ウィーンの建築物について語る
ウィンタースポーツホテル
ホテル・フリードリヒシュトラーセ
建築とカフェハウス
ベヴェーグング——新しい芸術グループ

III 戦後ウィーンとの共闘
都会と田舎——連続講演「二十世紀の外国文化」より
芸術局のためのガイドライン
イギリスの制服
アドルフ・ロースの回答(読者からの質問への回答)
一枚壁の家
住居タイプ(ラインツ公団住宅)
造成計画(ラインツ公団住宅)
シカゴ・トリビューン円柱建築
グランドホテル・バビロン

IV 離れてなおウィーンを語る
裸体
『人でなしの女』——メルヘン
節約について
黄金の馬車ではなく
ウィーン工芸襲撃——アドルフ・ロースの説明
サスペンダーとゲートルとヨーロッパ精神について
私——よりよきオーストリア人として
ウィーンの癌

V 回想するモダニスト
アドルフ・ロース、芸術家と子供へのみずからの態度を語る
偉大な神ロース——有名建築家へのインタビュー
オスカー・ココシュカ
ヨーゼフ・ホフマンのこと
アドルフ・ロース、ヨーゼフ・ホフマンについて語る
ロース氏、われわれに語る
松林の救済プロジェクト

訳注  早稲田大学建築学科中谷礼仁研究室
解題「ロース再起動——または物質がロースの口を借りて語ったこと」  鈴木了二
訳者あとがき

書評情報

古川真広(美術史・美学)
図書新聞2018年3月3日(土)