みすず書房

心の影 2【新装版】

意識をめぐる未知の科学を探る

SHADOWS OF THE MIND

判型 A5判
頁数 288頁
定価 5,720円 (本体:5,200円)
ISBN 978-4-622-08588-1
Cコード C1040
発行日 2016年11月18日
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心の影 2【新装版】

ベストセラー『皇帝の新しい心』につづき本書でも、ペンローズは、人間の脳は単なる計算機械ではないと強力に主張する。それでは意識の働きはわれわれには知りえないのか? いや、意識は断固として科学の対象でなければならない。
従来、脳の活動は古典物理学を用いて理解されると考えられていた。しかし、生物的システムにおいて量子コヒーレンスが演じる役割が明らかになるにつれ、心の探究には、いまだ知られざる方法が必要であることがますますはっきりしてきた。それは古典レヴェルと量子レヴェルにまたがる新しい物理理論なのだ。
さて、シナプスの強度の変化を支配し、シナプス連結の過程を組織化するものは何か。本巻でペンローズは、細胞骨格の微小管の果たす重要な役割に注目する。現在もてはやされているニューロン・レヴェルの記述は、より深い細胞骨格レヴェルの活動の「影」にすぎないというのである。プラトン的世界、物理的世界、心的世界を結びつける著者の壮大な構想が、ここにいよいよ姿を現わす。全2冊。

[初版2002年4月8日発行]

目次

第2部 心を理解するのにどんな新しい物理学が必要なのか——心のための計算不可能な物理学の探究
4 古典物理学には心のための場所はあるのか
4.1 心と物理法則
4.2 今日の物理学における計算可能性とカオス
4.3 意識——新しい物理学、それとも「創発的現象」?
4.4 アインシュタインの傾き
4.5 計算と物理学

5 量子世界の構造
5.1 量子論——パズルとパラドクス
5.2 エリツァー‐ヴァイドマン爆弾テスト問題
5.3 魔法の12面体
5.4 EPR型Zミステリーの実験場の身分
5.5 量子論の基盤——型破りの歴史
5.6 量子論の基礎法則
5.7 ユニタリ発展U
5.8 状態ベクトル収縮R
5.9 エリツァー‐ヴァイドマン爆弾テスト問題の解答
5.10 スピンの量子論——リーマン球面
5.11 粒子の位置と運動量
5.12 ヒルベルト空間
5.13 Rのヒルベルト空間記述
5.14 測定の交換
5.15 量子力学的な「および」
5.16 積状態の直交性
5.17 量子的からみあい
5.18 魔法の12面体の解説
付録B 12面体の色の塗り分けが不可能であること
付録C 一般的スピン状態のあいだの直交性

6 量子論と実在
6.1 Rは実在の過程であるか
6.2 多世界型の観点
6.3 |ψ>をまじめに受け取らなければ
6.4 密度行列
6.5 EPR対に対する密度行列
6.6 RのFAPP説明?
6.7 FAPPは2乗絶対値の規則を説明するか
6.8 状態ベクトルを収縮させるのは意識なのか
6.9 |ψ>を本気で受け入れるなら
6.10 重力的に引き起こされた状態ベクトル収縮
6.11 絶対単位
1.12 新しい規準

7 量子論と脳
7.1 脳の機能における大規模量子活動?
7.2 ニューロン、シナプス、そしてコンピュータ
7.3 量子計算
7.4 細胞骨格と微小管
7.5 微小管内部の量子コヒーレンス?
7.6 微小管と意識
7.7 心のモデル?
7.8 量子重力論における計算不可能性 1
7.9 オクラル機械と物理法則
7.10 量子重力論における計算不可能性 2
7.11 時間と意識的知覚
2.12 EPRと時間——新しい世界観の必要性

8 含意は?
8.1 人工知能「装置」
8.2 コンピュータにうまくできること、できないこと
8.3 美的感覚、等々
8.4 コンピュータ技術に固有のいくつかの危険
8.5 頭の痛い選挙
8.6 意識の物理的現象?
8.7 三つの世界と三つのミステリー

エピローグ
参考文献
訳者あとがき