みすず書房

量の測度【新装版】

SUR LA MESURE DES GRANDEURS

判型 A5判
頁数 216頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-08590-4
Cコード C3041
発行日 2016年11月18日
備考 在庫僅少
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量の測度【新装版】

本書は、数学と数学教育との接点における「量」の根本原理を、著者自身の教育経験にもとづいて明快に解説したものである。著者ルベーグは、ルベーグ積分の創始者としてはもとより、フーリエ級数論、ポテンシャル論などの分野でも輝かしい貢献をなしたことで著名な20世紀フランス最大の解析学者である。
長さ・面積・体積など量の概念を明確にするためには、まず量そのものと量を表わす数とを論理的に区別しなければならない。そのうえで、量を利用して数の概念を導入し、これをより一般の数へと拡張することが必要になる。
本書において、ルベーグは長さの測定に即して十進法にもとづく数の概念を導入し、「相等」、「和」、「積」などを定義しなおす。ついで、面積、体積、および曲線の長さ、曲面の面積を論じ、必然的に公理の組立てに向かわざるをえない理由を示す。こうした基盤のもとに量一般および微分積分法の基本をまとめる。
数学教育のあり方への提言として示唆に富む数学史上の古典的著作である。

[初版1976年1月10日発行]

目次



I 集団の比較.整数
1. 数えること
2. 算術は実験的科学である
3. 算術の応用について
4. 十進法を用いる教育学的理由
5. 続き
6. 形而上学を授業から引き離すこと

II 長さと数
7. 長さの測定によって整数から最も一般な数に移行すること
8. 数の過大近似値と過小近似値
9. 数の加法
10. 数の乗法
11. 数の減法と除法
12. 単位線分に関係しないこと
13. 数の「数学」学級での取扱いに対する教育学的批評
14. 続き.なぜ「数学」学級で無理数を避けることになるのか
15. 切断の考えを使うこと
16. 私の提案した説明法の利点
17. 続き.その意義
18. きっかりとした計算の意義について
19. 通約不能な距離の比
20. 距離の比は数である
21. 私の説明法によるタレスの定理などの証明
22. 角と弧の取扱いと数
23. 標準尺度による間接的比較

III 面積
24. 面分の面積の概念.第一の説明法.正方形網目
25. 長方形の面積
26. 多角形の面積(第一の説明法による)
27. 続き
28. 面分が面積を持つための条件
29. 合同な面分の面積
30. 長さの単位の変更
31. 面積の公理的定義
32. 多角形の面積の古典的評価式
33. 多角形の面積の第二の説明法
34. 二つの説明法の比較
35. 多角形の面積の第三の説明法(測量師の方法)
36. 教授上の問題と教師への注意
37. 面積の第四の説明法.有限同値な多角形
38. 証明には一般的な数概念に訴えることが必要
39. 続き
40. 教育学的な諸注意
41. 線分と円弧で限られた面分の面積に第一法の適用
42. ここの説明と教科書のそれとの比較
43. もっと一般な面分への適用.具体から抽象へ

IV 体積
44. 第一の説明法.立方体網目
45. 合同な立体の体積
46. 多面体の体積
47. 立体の体積の変位に対する不変性(第一の方法の変形)
48. 体積計算の簡単化
49. 続き.角錐台の体積の公式
50. 第一の説明法.面積に対する射影定理
51. 第二および第三の説明法
52. 薄片による公理α,β,γの検証
53. 教育学的諸注意.丸みを持った立体の体積
54. 面積や体積を定義する数とその数値計算について
55. ni, Ni について計算するのでなく推論することの必要性
56. 計算か推論か
57. 積分法による説明法の教育学的批判
58. 続き
59. 抽象的関数概念の困難性
60. 体積の積分法による推論の困難性
61. 整数の平方の和の計算に対する注意

V 曲線の長さと曲面の面積
62. 前置きと教育学的注意
63. 歴史的要約.幾何学的概念のコーシーによる代数化
64. 内接多角形と内接多面体の面積の極限について.シュワルツの逆説
65. 面積の古典的解析学的定義と逆説解明のためなされた諸努力
66. 長さに対する類比な逆説とそれに基づく反省
67. 曲線の長さの一般定義の提案について
68. 長さの実験的決定とその古典的解析学的定義の間の接合
69. 曲線の長さの古典的解析学的定義の汎関数概念による意味づけ
70. 曲線の長さの第一の説明法
71. 曲線の長さの存在
72. 曲線の長さの積分表示
73. 曲面積の第一の説明法とその円柱・円錐・球への適用
74. ジラールの定理の証明への応用
75. §73の面積の定義の論理的正当化
76. 続き
77. 曲面の面積の積分表示
78. 批判
79. 平面曲線の長さの第二の説明法
80. 同じく空間曲線の長さ
81. 同じく曲線の面積
82. 第二の説明法に基づく諸量の積分表示
83. 結論

VI 測定可能な量
84. 序論
85. 量とは何かを考えるにあたってのいろいろな反省
86. 物体族に定義される量の第一公理 a)
87. 続き.量の第二公理 b)
88. 関数関係にある二量についての基本的定理
89. 量の第三公理 c)
90. 諸公理についての反省
91. 比例する二量
92. ジラールの定理などへの応用
93. 幾つかの数に比例する数.古典的陳述の批判

VII 積分法と微分法
94. 序論.量(物体関数)と誘導量(点関数)
95. k次元幾何学の概要
96. 諸領域の定義
97. k次求積可能領域の定義.k次の面積とその存在条件
98. k次の面積が諸公理を満たすこと
99. 単純領域の求積可能性
100. 任意の求積可能領域の面積が公理γを満足すること
101. 面積の連続性
102. 求積可能領域Δの加法的関数f(Δ)
103. 領域関数f(Δ)の正の領域V(Δ)に関する導来数
104. 連続な点関数φ(P)のf(Δ)に関するΔの上に取られた積分
105. 平均値の定理と有限増分の定理
106. f(Δ)が積分問題の解であることの証明.記号∫Δφ(P)dV
107. 積分の多重積分による表現
108. 積分の累次積分による計算
109. 続き.単一積分
110. 積分法における変数変更
111. 諸領域の向き
112. 向きのある領域の上での積分の定義
113. 向きのある多様体の上の積分
114. グリーンの公式
115. 曲線の長さ・曲面の面積の諸概念の一般化

VIII 結論

本書で訂正した原著のミスプリントその他
訳者あとがき
索引