みすず書房

ゲシュタルトクライス

知覚と運動の人間学

DER GESTALTKREIS

判型 A5判
頁数 404頁
定価 7,150円 (本体:6,500円)
ISBN 978-4-622-09583-5
Cコード C3047
発行日 2022年11月16日
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ゲシュタルトクライス

〈従って以下に述べることは生物学とも精神物理学とも自然哲学とも名付けえないもので、むしろこれらの各領域から得られた手掛りを継承し、特別な方式の実験的研究を教え、ひいては病理学や治療医学の研究に今までとは違った裏付けと根拠とを与えようとするものである。……これが理論的という名の学問であるから、それが実地の経験や感覚による観察を軽視するものではないかという疑念は、まずもって退けられてよい。逆にむしろ、実験的研究の概念の方がそれの理論的考察の概念よりもより大きな影響を及ぼしたのである。また主体の導入ということは、それによって客観性が制約されるというような意味をもつものではない。ここで問題にされているのは、主観性あるいは客観性のいずれかの一面だけではなく、この両面の結合である。〉
(「第四版への序」より)

受苦(パトス)に連帯性を求めた医学的人間学を構想し、『パトゾフィー』を執筆したヴァイツゼッカー。その過程で、理論的な中心となった著作(1940年、初版刊行)。運動と知覚、主体と客体を、二分対立に先行する円環構造=ゲシュタルトクライスとして理解する。生物学、医学、哲学を越境する、生命をテーマとした人間学の試み。

[初版1975年2月28日発行]

目次


I 緒論
1 運動
自己運動/障碍/作業原理
2 知覚
自己運動に際しての運動の知覚——自己知覚
3 生物学的行為
相即/からみ合い/数学的統合と生物学的統合/ゲシュタルト心理学について/感覚運動性空間表象/機能の特殊化/特殊量/知覚は感官機能の産物ではない/対象と現在/同一対象、モノガミー/構成的錯誤/ネガティヴな作業/相互隠蔽性、回転扉の原理/主体性/創造——創造主/体系的手法と生物学的手法

II 神経系の病的障碍
末梢
1 機能変動
圧感覚の感覚生理学的分析/圧感覚の病理学について/いわゆる力覚と固有感覚/病的な事態投影/材質の知覚について
2 運動作業の解体
中枢性運動障碍の局在と作業原理/錐体路系/錐体外路性の運動障碍/特殊化と形式性/解剖学的観点/局在一般について/伝導路
3 時間的障碍としての機能変動
時間概念について/触覚における時間的機能変動/空間時間的障碍
4 感覚質と専門感官の病理学について
色彩視/自己制約
5 失調症
6 失認症の諸障碍

III 知覚の諸条件
1 解剖学的構造の諸条件
知覚の述語形成と実在性格について
2 生理学的(類生理学的)諸機構
刺戟、機能、対象/人為界/機能と機能構造
3 空間、時間および量
a 体験された秩序は客観的秩序ではない/b 客観的秩序が体験の秩序を制約する/c 知覚はいくつかの可能な客観的秩序を示す/d 知覚における量の反論理/e 空間と時間は世界の中にある
4 自我と対象の出会い(相即)

IV 運動の諸条件
1 運動の解剖学的諸条件
2 運動の生理学的諸条件
3 形式の発生
形式転換/有機体と環界との相対性としての形式/形式の発生はゲシュタルトクライスである
4 空間、時間、形式
意図と結果の逆説的関係/不意打ちと予期/生物学的時間の構造/生物学的空間の構造

V ゲシュタルトクライス
自然哲学から生理学へ/現実性の条件としての不確定性
1 異元機能から相即原理へ
a 学問は生命過程を精神物理的‐異元的なものとして扱う/b ゲシュタルトクライスの力動的形式。等価原理/c 符合並行論
2 主体の導入と行為の相補的一元性
a 転機と非恒常性の自己経験/b 主体‐客体‐関係としてのゲシュタルトクライスの詳細な特徴づけ
3 パトス的範疇、根拠関係、性の円環
若干の概念の解説

「ゲシュタルトクライス」について(アンリ・エー)
訳注
解説
訳者あとがき
新装版あとがき
論文目録