みすず書房

〈大澤壽人さんはアメリカに行きましたが、あの頃のモダニズムをあれだけ吸収したのは天才的です。彼のモダニズムこそ、当時の最先端を行っているといえます。…当時ヨーロッパでは鉄工所や機関車を音楽にすることが流行りました。… 彼は触発された。[神風協奏曲]は飛行機のプロペラ音など機械的な魅力に満ちています。リズムの魅力、フランス的な洒脱…〉(飯守泰次郎・指揮者)

〈今から80年以上も前に、アメリカとフランスという二つの国で勉強をした大澤壽人という作曲家の存在は特別な輝きを放っていると思う。大澤壽人の生き様とその音楽には、先見性と先鋭性と先進性が常に見られる。…大澤壽人の音楽は、古い・新しいという論議を超えたところで、純粋に音楽って素晴らしいと思える響きを確実に持っている。そうだ、我々が日々扱っているのは決してオールド音楽ではなく、クラシック音楽なのだと当たり前のことを気づかせてくれる作曲家だと言えるだろう〉(山田和樹・指揮者)

大澤壽人(おおさわ・ひさと 1906-53)。神戸に生まれ育ち数々の交響曲や協奏曲などを世におくった天才作曲家、ボストン交響楽団で日本人としてはじめて指揮台に立ち、パリでも活躍したこの稀有な存在は、歿後なぜ突然忘れられてしまったのか。最近になって再発見・再評価が始まったのは、どのような理由からか。膨大な資料と聞き書きからその生涯と作品を見事に再構成した評伝。多彩な人物とともに、日本のクラシック音楽黎明期の詳細も伝える。

目次

プロローグ
第1章  出生から関西学院中学部卒業まで
第2章  関西学院高等商業学部の青年音楽家
第3章  アメリカで花開く才能
第4章  ボストン交響楽団指揮と「交響四部作」
第5章  パリ楽壇デビュー
第6章  帰朝演奏会と当時の日本楽壇
第7章  日中戦争下の日々と神戸女学院の教壇
第8章  太平洋戦争開戦
第9章  戦後の彩り
第10章 1950年代の幕開け
第11章 寵児の急逝
第12章 平成の復活劇
エピローグ

附記 大澤壽人の姓の読み方と生年

参考文献
あとがき
大澤壽人略年譜

ディスコグラフィーと楽譜
大澤壽人・作曲作品名索引
外国人名索引
漢字および日本人名索引

書評情報

小沼純一
音楽の友2017年11月号