みすず書房

模範像なしに

美学小論集

OHNE LEITBILD

判型 A5判
頁数 256頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-08667-3
Cコード C1010
発行日 2017年12月15日
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模範像なしに

「最近のすぐれた芸術作品の数々は、そのように芸術が廃棄されてしまうという悪夢であるものの、しかしながら、それらの作品は同時に、実在しているということをつうじて、廃棄されることに逆らってもいるのである。(…)
おのれの苦しみのために人類は、苦しみを鎮めたり和らげたりすることのない芸術を求める。芸術は人類にたいして、人類の没落という夢を見せるのだが、それは人類を覚醒させ、みずからを律する力をもって生き延びさせるためなのである。」

アドルノ生涯の課題でもあった、モダニズム芸術を批判的に擁護するための論考を中心に、映画論や自伝的エッセイも収録する。遺稿となった『美学理論』を、具体的な芸術実践のありさまから補完する1960年代の論集であり、「規範」「伝統」「文化産業」「芸術社会学」「マネージメント」「機能主義」「バロック」「芸術ジャンルの境界」といった特定の主題に焦点を当てながら、音楽や美術から建築や映画まで、多角的に論じる。
さらに、幼年時代の回想やスケッチ風の旅行記からは、他の著作には表れない哲学者のプライヴェートな側面も窺える。アドルノ晩年の思考のエッセンスであるとともに、アドルノ自身によるアドルノ入門の書ともいえよう。
(カバー裏写真は、アドルノ、1924年)

目次

模範像なしに——まえがきにかえて
アモールバッハ
伝統について
ジュ・ド・ポーム美術館での走り書き
ジルス・マリーアより
好ましからざるもののすすめ
文化産業についてのレジュメ
ある世話人への追悼文
映画の透かし絵
チャップリン二論
芸術社会学のためのテーゼ
今日の機能主義
ルッカ日誌
悪用されたバロック
ウィーン、1967年のイースターのあとで
芸術と諸芸術

解題
訳者あとがき