みすず書房

メトロポリタン歌劇場

歴史と政治がつくるグランドオペラ

GRAND OPERA

判型 A5判
頁数 560頁
定価 9,240円 (本体:8,400円)
ISBN 978-4-622-08733-5
Cコード C0073
発行日 2018年10月10日
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メトロポリタン歌劇場

1883年秋、ニューヨークのブロードウェイ39丁目にオープンしたメトロポリタン歌劇場。国立や州立ではなく、ヴァンダビルト、モーガン、ローズヴェルトなど個人出資者たちが資金を拠出しあって持ち株会社の形で設立されたMETは、「民主化した歌劇場」のスタンスを失うことなく、時代の波を潜ってきた。二度の大戦、大恐慌、リンカーン・センターへの移転を経て、労働争議に人種差別問題、冷戦終結、インターネットの席巻……
貴族階級の集まる社交場として発展してきたヨーロッパのオペラハウスとは違い、時代と社会、政治の荒波に揉まれ、常に経営の危機にさらされながらMETが今日に至る道はアメリカの縮図でもある。総支配人の地位をめぐる椅子取りゲーム。大統領が歌劇場の労働問題に関与し、新聞、雑誌は信じられないほどの熱心さで新シーズンのプログラムを報じ、公演のレビューや経営について書いた。
「星の爆発」のニックネームをもつクリスタルのシャンデリアが上がり、舞台の上に奇跡の時間が生まれる。その陰に、経営陣と指揮者、オーケストラ、歌手、演出家、批評家、そして観客が織りなす130年のドラマ。

第6章(抜粋)をお読みになれます(PDF、4.4MB)
訳者あとがき(全文)をお読みになれます(PDF、254KB)

目次

まえがき
謝辞

第1章 桟敷の問題 1883-1884年 ベルカント
初日/設立にむけて/劇場/『ファウスト』——10月22日/『ランメルモールのルチア』——10月24日/先例/第一次オペラ戦争 /ベルカントの衰退と興隆

第2章 文化の中心地 1884-1903年 ドイツもののシーズンとフランスオペラ
ドイツもののシーズン——1884-1891年/三つの『預言者』/国際化したシーズン—1891-1903年/フランス語の演目が辿った運命の放物線型の軌跡

第3章 オペラ戦争 1903-1908年 『パルジファル』『サロメ』とマンハッタン歌劇団
ハインリッヒ・コンリート/冒涜と堕落 /第二次オペラ戦争——1906-1908年/初演——1906-1908年/初期の幕引き

第4章 現代性 1908-1929年 プッチーニ
体制の交代/大部分はトスカニーニ——1908-1910年/言語の政治学/カルーゾとファーラー——現代の有名人/大部分はプッチーニ——1918-1929年

第5章 苦難の時代 1929-1940年 ワーグナー
大恐慌/アメリカ化 /民主化 / 演目——1935-1940年/ワーグナー——1929-1940年

第6章 戦争の重圧 1940-1950年 指揮者のオペラ  (抜粋、PDF、4.4MB)
初日——1940年12月2日/『フィデリオ』——1941年2月14日/苦しい試練/演目——1940-1950年/指揮者たち/記念碑的作品/ジョンソン時代再検討

第7章 ビジネスとしてのオペラ 1950-1966年 ヴェルディ
ルドルフ・ビング/1950-1951年/「視覚的な面と演劇的解釈」/競争と批評家たち/立ち見客とサクラ/労使問題/人種問題(カラー・ライン)/演目——1950-1966年/別れ/パリ巡業

第8章 過渡期 1966-1975年 アメリカのオペラ
リンカーン・センター/オープニング・ナイト/アメリカのオペラ/事後検討——1966-1967年 危機に瀕したメトロポリタン/メトロポリス/ビングの最後の主張——1967-1972年/椅子取りゲーム

第9章 絶対的なマエストロ 1975-1990年 20世紀ヨーロッパのオペラとバロック
ジェイムズ・レヴァイン/ブリス、レヴァイン、そしてデクスター、1975-1980年/ブリスとレヴァイン、1980-1985年/ブリスからクローフォードへ、そしてサザンへ、1985-1989年/さらなる椅子取りゲーム

第10章 支援とペレストロイカ 1990-2006年 (帰ってきた)アメリカのオペラとスラヴ語のオペラ
ジョゼフ・ヴォルピ/アメリカのオペラ、1991-2005年/スターの力/METの字幕/当てにならない後援者/ペレストロイカ/その他のプロダクション/帳簿を締める

第11章 新しいメディアの時代 2006-2013年
次世代に伝える/ゲルブの「新しいMET」——2006-2007年/後退——2009-2011年/権力と実行(成就)——2011-2013年

追記


訳者あとがき  (PDF、254KB)
作品名・役名索引
人名索引