みすず書房

ヴィータ

遺棄された者たちの生

VITA

判型 四六判
頁数 696頁
定価 5,500円 (本体:5,000円)
ISBN 978-4-622-08786-1
Cコード C0036
発行日 2019年3月22日
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ヴィータ

ブラジル南部の保護施設「ヴィータ」——そこは行き場をなくした薬物依存症患者・精神病患者・高齢者が死を待つだけの場所だった。
現地で調査中だった著者は1997年にそこで精神病とみなされていたカタリナという女性に出会う。「言葉を忘れないために」と言って詩のような言葉を書き続ける彼女は何者で、なぜヴィータに収容されたのか。それを探るうちに、新自由主義の影響のもと、国家・経済・医療・家族の網の目のなかで、生産性という基準で人間を選別し、遺棄する現実が明らかになっていく。著者の粘り強い調査のすえカタリナの真の病名に辿りついた時、彼女の綴った言葉の意味は明らかになり、尊厳は回復される。
周縁化された人々の生きられた経験を復元し更新し続けるために、現代において人類学の果たすべき使命は何かを問い直す話題作。本書は、マーガレット・ミード賞ほか数々の賞を受賞した。

目次

はじめに 「生きているのに死んでいる——外は死んでいるけれど、内は生きている」

第一部 ヴィータ
社会の遺棄地帯
ブラジル
「市民」なるもの

第二部 カタリナと文字
精神の生活
身体の社会
不平等
元・人間
家とけもの
「愛は遺棄された者たちの幻」
社会的精神病
時間の病気
神、セックス、主体性(エージェンシー)

第三部 医療記録
公的な精神医療
典型的な患者としてのカタリナの生
民主化と健康の権利
経済的変化と精神疾患
医学
人生の終わり

ケアと排除
移住とモデル政策
女性、貧困、社会的死
「わたしは人生のせいでこうなった」
症状の意味
薬を与えられるだけの存在

第四部 家族
つながり
運動失調症
カタリナの家
弟たち
子どもたち、義理の両親、元夫
養父母
「わたしの身体は薬のためにある、わたしの身体が」
日々の暴力

第五部 生物学と倫理
痛み
人権
価値判断
遺伝子発現と社会的遺棄
家系
遺伝学的な集団
失われたチャンス

第六部 辞書
「その下にはこれがあった、わたしが名づけを引き受けようとせぬもの」
第1巻/第2巻/第3巻/第4巻/第5巻/第6巻/第7巻/第8巻/第9巻/第10巻/第11巻/第12巻/第13巻/第14巻/第15巻/第16巻/第17巻/第18巻/第19巻

おわりに 「言葉への道」

後記 「わたしは始まりの一部、言葉だけじゃなく、人びとの」

あとがき
ヴィータへの回帰

2013年版への謝辞
謝辞
原注
訳注

訳者あとがき

参考文献
索引