みすず書房

カントの生涯と学説【新装版】

KANTS LEBEN UND LEHRE

判型 A5判
頁数 514頁
定価 8,800円 (本体:8,000円)
ISBN 978-4-622-08807-3
Cコード C1010
発行日 2019年3月18日
オンラインで購入
カントの生涯と学説【新装版】

カッシーラーの『カントの生涯と学説』は、初版(1918)以来数十年をへた現在もなお、最良のカント書のひとつである。カントの哲学思想とその生涯の全体がひとつに溶けあったその内容と文体は、明晰で深い洞察をしめしている。名匠の手によるこのカント把握によって、読者はカントの哲学および人間の理解へと導かれるであろう。
本書の最大の魅力は、論述の対象であるカント哲学の偉大さと、著者であるカッシーラーの思想とが見事な一致を示している点にある。本書執筆当時、カッシーラーの思想は転換期にあった。ひとつには第一次大戦に直面して、理性にもとづく現実認識の一面性を確信した彼は、それまでの新カント派的な発想をこえて、世界了解の前提となる想像力・感情・意志等々人間の豊かな精神の全体の学をめざしながら、カントの把え直しに向かっていたのである。〈全体が問題になっている〉カントとカッシーラーの親和力は、カントの雄大な体系的思索の頂点である『判断力批判』をめぐる本書の考察に、その結実をみることになる。『判断力批判』を人間の精神形態の十全な表現ととらえる著者の分析は、〈象徴形式〉へとつらなるであろう。ふたりの巨匠の出会いから成った第一級の古典的著作といえよう。

[初版1986年3月10日発行]

目次

序文
緒論

第一章 少年期及び修業時代
1 〔少年期と学生時代〕
2 〔家庭教師時代〕

第二章 修士(マギスター)時代とカント学説の発端
1 自然科学的世界像——宇宙論と宇宙物理学
2 形而上学的方法の問題
3 独断的形而上学の批判——『視霊者の夢』
4 感性界と英知界との区別
5 批判的根本問題の発見

第三章 『純粋理性批判』の構築と根本問題
1 〔『純粋理性批判』の叙述形式〕
2 〔『純粋理性批判』の根本概念〕
〔(1)カント哲学の出発点〕
〔(2)コペルニクス的転回の意味〕
〔(3)「超越論的」と「主観性」〕
〔(4)アプリオリな綜合〕
〔(5)経験の可能性〕
3 〔超越論的原則論の体系〕
〔(1)カテゴリーの体系〕
〔(2)直観の公理の原則〕
〔(3)知覚の先取の原則〕
〔(4)経験の類推の原則〕
〔(5)経験的思惟一般の要請の原則〕
4 〔超越論的弁証論の課題と解決〕
〔(1)心理学的理念〕
〔(2)宇宙論的理念〕
〔(3)神学的理念〕
〔(4)結論〕

第四章 批判哲学の最初の諸成果:『プロレゴーメナ』、ヘルダーの『考案(イデーン)』及び歴史哲学の基礎づけ
〔1 『プロレゴーメナ』の成立〕
〔2 『自然科学の形而上学的原理』〕
〔3 歴史哲学及びヘルダーとの争い〕

第五章 批判的倫理学の構築
〔1 批判的倫理学まで〕
〔2 カント倫理学の形式主義〕
〔3 道徳の根本原理〕
〔4 諸目的の王国〕
〔5 意志の自由〕
〔6 英知界の思想〕
〔7 自由の把握不可能性と道徳的信仰〕
〔8 「我が上なる星繁き天空と我が内なる道徳法則」〕

第六章 『判断力批判』
1 〔『判断力批判』の「根本的統一」の理解のために〕
2 〔『判断力批判』の問題——その前史〕
3 〔「合目的性」の概念〕
4 〔美学的判断力の批判〕
5 〔目的論的判断力の批判〕

第七章 晩年の諸著作と闘争——『単なる理性の限界内の宗教』及びプロイセン政府との衝突
〔1 カント哲学の反対者たち〕
〔2 カントの政治思想〕
〔3 カントの宗教思想〕
〔4 『宗教論』をめぐるプロイセン政府との衝突〕
〔5 カントの国家論と法哲学〕
〔6 『諸学部の争い』〕
〔7 未完の著作と晩年のカント〕
〔8 総括〕


あとがき(浜田義文)
カント著作名索引
人名索引