みすず書房

精神分析を創始し、20世紀の思想を決定付けたフロイト。だが、フロイトは本当に読まれているだろうか。読むとは著者とともにテクストを新たに創る、創造的な行為である。本書はまさにそのような意味でフロイトを読む。そして、その思考のエッセンスを浮上させる。
フロイト理論の生成過程を精緻にたどり、その背景で未だ明るみになっていない問題群の可能性を引き出すこと。フロイトが切り開いた普遍性の通路を、現代の臨床経験に足場を置きながら、新たに見出すこと。臨床と理論の共振する地点から、フロイトの跳躍が明らかになる。
いま、フロイトの何が重要なのか。フロイトは精神分析家としてどのような変容を遂げたのか。その思想の核心を明かす、フロイト論の決定版。

目次

序章 フロイトの歩み
I 二つの通路  II 理論モデルの変遷  III 方法の力  IV 概念の構築 V ナルシシズムと倒錯  VI 本書の構想

第一部 倒錯論としての精神分析

第一章 ヒステリーの建築様式
I ヒステリーの問い  II 抑圧とは何か  III 「ヒステリーの建築様式」  IV 「症例ドーラ」を再解釈する  V ヒステリーのネガとしての「倒錯」  VI もう一つの部屋

第二章 心的両性性と肛門欲動論
I 心的両性性とは何か  II 「症例鼠男」と肛門性愛  III 「症例狼男」とマゾヒズム  IV 強迫神経症とマゾヒズム  V 倒錯論の二つの系列

第二部 ナルシシズムという迷宮

第三章 ナルシスの身体
I ナルシシズムの謎  II 『メタサイコロジー論』という礎石  III ナルシス神経症論  IV 二つの精神病論

第四章 自己という装置
I 自我の生成  II 同一化と自我変容  III 超自我の形成  IV 自己のテクノロジー

第三部 死の欲動の衝撃

第五章 「子供が世話される」
I 「子供が叩かれる」再考  II 「子供が世話される」  III 依託の時間性とセクシュアリティの生成  IV 人間のセクシュアリティの構成様式

第六章 死の欲動とマゾヒズム
I 超越論的原理の探究  II 恒常性原理とゼロ原理(涅槃原理)  III マゾヒズムの謎  IV 人間の根源的マゾヒズム

第四部 分析家のメチエ

第七章 分析技法と終結の問い
I 二つの技法論  II リズムと心的空間  III 分析過程とその終結

エピローグ 分析家の日常


あとがき