みすず書房

精神分裂病【改版・新装版】

分裂性性格者及び精神分裂病者の精神病理学

LA SCHIZOPHRÉNIE

判型 A5判
頁数 274頁
定価 5,940円 (本体:5,400円)
ISBN 978-4-622-08829-5
Cコード C3047
発行日 2019年6月7日
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精神分裂病【改版・新装版】

精神分裂病は最大の難病の一つである。その基本障害の性質は、さまざまな形で言語化されてきた。「精神内界の失調」(ストランスキー)、「指揮者のないオーケストラ」(クレペリン)、「燃料のないエンジン」(シャラン)など。本書の著者ミンコフスキーは、比喩からは真の科学は生まれないとし、「現実との生ける接触の喪失」という概念によって、単なる臨床的疾患であることを超えた、ある特殊な〈病的な人間〉の人間学的把捉をここに試みたのである。
この概念は、自閉性から出立する。自閉性には、「豊富なる自閉性」と「貧弱なる自閉性」があり、この後者が分裂病の統一的理解にとって重要性をもつ。なぜなら、一つの疾病を規定すべき基礎は、侵された人格の欠損面を明らかにすることから、得られるからである。
ミンコフスキーの本書は、その師ブロイラーを乗りこえた新しい理論を打ち立てた——L・ビンスワンガーとともに、哲学の援用を受けることによって、最近精神医学のパイオニア的役割を果たした——ばかりでなく、きめの細かい精神病理学的記述によって、精神分裂病の理解のための一般的案内書として、読書界にながい生命を持ちつづけている。

[初版1954年発行、改版1988年発行]

目次

日本の読者へ
新版へのはしがき

序論

第一章 分裂性と同調性
A 一般的考察
B クレッチュマーの分裂性性格と循環性性格、類分裂性性格と類循環性性格、ブロイラーの分裂性性格と同調性性格
C デルマ、ボルによる性格の研究
D 分裂性、同調性の概念を導入することによって生ずる精神病学の諸問題
  1 分裂性と分裂病、地盤と疾病
  2 分裂病および躁鬱病の基礎としての分裂性と同調性

第二章 精神分裂病の基本障碍と分裂病的思考
A 現実との生ける接触
B 知的痴呆と分裂病的痴呆
C 分裂病者の空間的思考(病的合理主義と病的幾何学主義)

第三章 内閉性
A 精神病の内容と内閉性
B 「現実との接触喪失」の健常心理における原型としての夢想と人格的活動(エラン)の周期性、人格的活動の分裂病的障碍、豊富なる内閉性と貧弱なる内閉性

第四章 分裂病的態度と精神的常同症
A 病的夢想
B 類分裂病(スキゾマニー)なる概念の批判、正常夢想と病的夢想
C 病的不満と単純性類分裂病
D 病的悔恨と疑問的態度
E 分裂病的態度と精神的常同症

第五章 分裂病概念の治療的意義
A 分裂病に対する「的外れ」の批判について
B 分裂病概念の治療的意味
C 実際的応用

第六章 展望
A 体質的類型学
  a 癲癇性性格
  b 感情について
  c 理性型と感覚型
B 精神病理学的機構
  a 「分割」と結合
  b 分割、内閉性、解体
  c 理論
  d 因子的分析
C 形の世界
  a 形の世界と分裂病の精神病理学
  b 形式的能力
D 言語

訳者あとがき

読者の皆様へ(本書270頁)

2002年1月、日本精神神経学会理事会において、従来「精神分裂病」と呼ばれてきた病名を「統合失調症」に変更することが承認され、同年8月に開催された「世界精神医学会」で名称変更が公表されました。それにともない、2002年10月以後に刊行される小社の該当新刊書につきましては、書名および本文中の表記は「統合失調症」に統一する方向で考えてまいります。
また、本書のように、すでに刊行されている書籍内での「精神分裂病」あるいは「分裂病」の表記に関しましては、「統合失調症」と読みかえていただきたく存じます。
「精神分裂病」という用語が医療現場や社会生活で支障を生み、名称変更にいたるいきさつは重大視しておりますが、どうぞご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
(2002年9月  みすず書房)