みすず書房

アウシュヴィッツ潜入記

収容者番号4859

THE AUSCHWITZ VOLUNTEER

判型 四六判
頁数 488頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-08830-1
Cコード C0022
発行日 2020年8月17日
オンラインで購入
アウシュヴィッツ潜入記

ナチス・ドイツの攻撃でワルシャワが陥落したのは1939年9月。そのちょうど1年後、ワルシャワの路上で兵士も市民も無差別に逮捕されるナチスの一斉取り締まりで、ポーランドの情報将校ピレツキは意図的に捕まってアウシュヴィッツに送られた。
当時ロンドンのポーランド亡命政府は、新設のこの収容所の目的を探っていた。志願したピレツキの主な任務は、収容所の実態を外部に流すこと、そして同国人の収容者仲間を密かに組織し、もし連合軍による空爆があったらそれに呼応して武装蜂起できるよう準備を進めることだった。
ピレツキの情報は翌年初頭から連合軍に届き始める。まずポーランド人政治犯の処刑、独ソ戦が始まるとソ連軍捕虜の大量処刑、さらにユダヤ人の「最終処分」のニュースは、他のルートに先駆けて伝えられた。
収監から3年近く、ピレツキはみずからも飢餓、チフス、拷問に耐えながら任務を全うしようとするが、空爆と武装蜂起は軍上層部の反対で実現しない。彼はついに見切りをつけ、二人の仲間と脱走した。
本書は1945年にポーランド軍上司に宛てて書かれた最終報告書である。全編が強靱な意志に貫かれ、しかし事実を淡々と綴ろうとしている。冷戦後も長らく、タイプされたポーランド語原本のまま埋もれていたが、2012年にはじめて英訳・出版された。
一方、ピレツキ自身は、ドイツの敗戦によってポーランドに対するソ連の影響力が強まるなか、今度は反ソ地下抵抗運動に参加する。しかし1947年、一党独裁体制を強めた祖国の共産主義政権に逮捕され、翌年に処刑された。

目次

はじめに (ノーマン・デイヴィス)
序文 (マイケル・シュードリック: ポーランド・ラビ長)
英訳者のノート/発行者のノート/報告書の主なできごと/歴史的背景

ペウチンスキ将軍宛てのピレツキ大尉の添え状
ピレツキ大尉の1945年アウシュヴィッツ報告書

訳者あとがき
付録
(1)アウシュヴィッツにおけるドイツ語の職務と階級
(2)暗号で言及されている人物・地名
(3)「報告書」関連年表
索引

書評情報

板橋拓己(成蹊大学教授)
日本経済新聞 2020年9月26日
加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)
読売新聞 2020年9月27日
藤原辰史(京都大学人文科学研究所准教授・食農思想史)
朝日新聞 2020年10月17日
柴田三吉(詩人)
しんぶん赤旗 2021年1月3日