みすず書房

豊富な体験をふまえた通訳論。通訳者の社会・文化史的意義を本格的に研究した、初めての書。経験・知見にもとづく深い洞察が冴える。同時通訳パイオニア——西山千、相馬雪香、村松増美、國弘正雄、小松達也、各氏へのロング・インタビューを収録。外交の内幕や、通訳の仕事をめぐる驚くべきエピソードに満ちた、手応えの大きいオーラル・ヒストリーとなっている。
「通訳とは何か」「通訳者の役割とは何か」——現役の通訳者、通訳を志す人、そして、通訳・翻訳の世界を深く知りたい人びとに贈る、本格的通訳研究である。そしてまた、希有なドキュメントが日米関係の裏面史を明かし、国際問題への関心に応える貴重な一冊である。

[初版2007年8月3日発行]

目次

第1章 はじめに
透明な存在/通訳の歴史/日本の戦後外交史における通訳/研究手法としてのオーラル・ヒストリー/ライフストーリー・インタビュー/同時通訳パイオニア

第2章 これまでの通訳と翻訳に関する研究
翻訳と通訳/翻訳研究/通訳研究

第3章 日本における通訳と翻訳
長崎通詞から同時通訳へ/日本人の言語観と通訳/通訳訓練と通訳研究/通訳教育と英語教育/通訳教育のあり方/これからの通訳者

第4章 通訳者の「ハビトゥス」
外国語として英語を学ぶ/英語学習の動機づけ/中学時代の英語の先生/戦時中の英語学習/捕虜との出会い/終戦後の英語学習/進駐軍の兵士から英語を学ぶ /海外体験/バイリンガルとして育つ/英語の習得/批判精神/日本語を学ぶ/第二次世界大戦の体験/考察

第5章 通訳という「フィールド」へ
進駐軍/道徳再武装運動/日本生産性チーム/日米経済貿易閣僚会議/考察

第6章 「実践」としての通訳
「ライシャワー先生」/通訳者は透明人間/目に見える機械として/「不沈空母」誤訳事件/日本初の女性同時通訳者/首相秘書官の「けれん通訳」/通訳者のポジショニング

第7章 考察——通訳の役割をめぐって
「声」と「文字」/通訳における文化的要素/通訳者の役割とは何か

終章 今後の課題

あとがき
参考文献