恋愛のディスクール・断章【新装版】
FRAGMENTS D’UN DISCOURS AMOUREUX
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 384頁 |
定価 | 4,950円 (本体:4,500円) |
ISBN | 978-4-622-08954-4 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2020年11月2日 |
FRAGMENTS D’UN DISCOURS AMOUREUX
判型 | 四六判 |
---|---|
頁数 | 384頁 |
定価 | 4,950円 (本体:4,500円) |
ISBN | 978-4-622-08954-4 |
Cコード | C1010 |
発行日 | 2020年11月2日 |
「恋するわたしは狂っている。そう言えるわたしは狂っていない。わたしは自分のイメージを二分しているのだ。自分の眼にわたしは気のふれたものと映る(わたしは自分の錯乱のなんたるかを識っている)のだが、他人の眼にはただ変っているだけと映るだろう。わたしが自分の狂気をいたって正気に物語っているからだ。わたしはたえずこの狂気を意識し、それについてのディスクールを維持しつづけている」
恋愛の諸相を分析し、その内的宇宙を開示するのに、ロラン・バルトほどの適任者はいないであろう。この著作は、恋する主体に扮した「わたし」の体験をはじめ、友人との会話、『若きウェルテルの悩み』、ニーチェ、ラカン、禅など、さまざまなテクストを自在に引用、あるいはそっと潜ませて展開されている。不在、共苦、肉体、沈黙、夜など、バルトならではの断章形式によって「非連続の書物、いくぶんかはラブストーリーに異議を申し立てる書物」となった本書は、刊行直後から今に至るまで、世界中で多くの読者を惹きつけている。いつでも、いつまでも読んでいたい本である。
(初版1980年9月24日発行)
このような書物が……
この書物はどのように作られているか
1 フィギュール - 2 順序 - 3 出典
底なしの淵に沈む…
「おもいの淵に呑み込まれ、圧倒され……」
1 甘美さ - 2 イゾルデー - 3 どこにもない - 4 いつわりの死の想念 - 5 底なしの淵の機能
不在
不在の人
1 不在の人とは他者である - 2 女性のディスクールか - 3 忘却 - 4 溜息 - 5 不在の操作 - 6 欲望と必要 - 7 祈願 - 8 水中の顔の公案
素晴しい
「素晴しい!」
1 九月の朝のパリ - 2 全体に - 3 欲望の特殊性 - 4 同語反復
肯定
手に負えぬもの
1 愛の抗議 - 2 想像界の激しさとよろこび - 3 力は「解釈者」の側にない - 4 もう一度はじめよう
変質
鼻の先に
1 腐敗のあと - 2 あの人が縛られて見える - 3「壺がこわされる」 - 4 存在の狂乱 - 5 「わが小娘たちよ」
苦悩
苦悶
1 毒薬としての苦悩 - 2 原初的苦悶
無力化
恋に恋する
1 二羽の鳩 - 2 利害得失
苦行
苦行者のように
1 この身を罰する - 2 脅迫
アトポス
アトポス
1 分類不能なもの - 2 無邪気さ - 3 独自の関係
待機
待機
1 エルワルトゥング - 2 台本 - 3 電話 - 4 幻覚 - 5 待つ男/女 - 6 中国の高官と歌姫
隠す
黒眼鏡
1 決断 - 2 二重のディスクール - 3 おのが仮面をさし示しつつ進む - 4 黒眼鏡 - 5 記号の分割 - 6 「激情」
所を得る
「誰もがその所を得て」
1 残酷な遊び - 2 あらゆる構造は居住可能である - 3 笑うべきもので、しかもねたましい
破局
破局
1 二種の絶望 - 2 限界状況
制限する
ラエチチア
1 ガウディウムとラエチチア - 2 愛の不運
こころ
こころ
1 膨張する器官 - 2 私の才気とわたしのこころ - 3 重く悲しいこころ
充足
「この世の官能のすべて」
1 過剰 - 2 「至高善」を信じる
共苦
わたしはあの人の痛みを感じる
1 苦痛による結合 - 2 生きよう! - 3 繊細さ
理解する
「わたしは理解したい」
1 灯火の下に - 2 映画館を出ながら - 3 抑圧 - 4 解釈 - 5 ヴィジョン、大いなる明るき夢
行動
「どうすればよいのか」
1 あれか/これか - 2 無益な問題 - 3 怠惰
共謀
共謀
1 二人してささげる讃辞 - 2 余計なのは誰か - 3 オディオサマト(ライバル)
接触
「わたしの指がついうっかりと……」
1 肌への問いかけ - 2 理髪師の指のように
不測のできごと
できごと、障害、困難
1 …だから - 2 「マヤ」の黒きヴェール - 3 原因ではなく構造が - 4 偶然のできごと、ヒステリー
肉体
あの人の身体
1 分割された身体 - 2 吟味する
告白
対話
1 触れる - 2 一般論を装った口説き
奉献
奉献
1 愛の贈物 - 2 ビコーズ・アイ・ラヴ - 3 与えたいものについて語る - 4 ことばを捧げる - 5 書きつける - 6 与えるのでなく刻印する
悪魔
「われわれは自身にとっての悪魔」
1 自在輪で - 2 複数 - 3 類似療法
服属
愛の服属
1 恋愛における服属 - 2 反抗
消費
豊かさ
1 緊張の讃美 - 2 イギリスの批判者に対するゲーテの奇妙な返答 - 3 打算のない計算 - 4 美
脱現実
仮死の世界
1 ニスの褪せた細密画 - 2 普通の会話 - 3 イタリアの旅 - 4 権力体系 - 5 ガラス戸 - 6 非現実と脱現実 - 7 ローザンヌ駅のビュッフェで - 8 ものごとの子供っぽい裏面
ドラマ
小説/ドラマ
1 ありえない日記 - 2 すでに起ってしまった物語
生皮を剥がれた者
生皮を剥がれた者
1 痛覚点 - 2 冗談に弱い
書く
言うに言われぬ愛
1 愛と創造 - 2 調節 - 3 エクリチュールと想像界 - 4 非分割 - 5 交換体系外にあるエクリチュール
彷徨
幽霊船
1 愛の消失 - 2 不死鳥 - 3 ある神話 - 4 色合いのニュアンス
抱擁
「あなたの腕のやさしい静けさの中で」
1 眠りの中の - 2 ひとつの抱擁からもうひとつの抱擁へ - 3 充足
追放
想像界からの追放
1 自分を追放する - 2 イメージの喪 - 3 悲しみ - 4 二重の喪 - 5 燃え上る炎
腹だたしさ
オレンジ
1 あつかましい隣人 - 2 いらだち
フェイディング
フェイディング現象
1 薄く、薄く、なお薄く - 2 厳しい母親 - 3 あの人の夜 - 4 ネクイア - 5 声 - 6 疲労 - 7 電話 - 8 放っておいてほしいのか、気にかけてほしいのか
あやまち
あやまち
1 列車 - 2 あやまちとしての自制 - 3 苦痛の無罪性
祝祭
「選ばれし日々」
1 祝祭 - 2 生きる術
狂人
「わたしは狂っている」
1 花の狂人 - 2 人目につかぬ狂人 - 3 わたしは他者でない - 4 いかなる権力にも汚されず
困惑
「気づまりな様子」
1 充電された状況 - 2 さめた幻惑
グラディヴァ
グラディヴァのような女
1 錯乱 - 2 反・グラディヴァ - 3 再びこまやかな心遣い - 4 愛する/恋をしている
服装
青い上着と黄色のチョッキ
1 身仕度をする - 2 模倣 - 3 変装
同一化
同一化
1 従僕、狂人 - 2 犠牲者にして死刑執行人 - 3 宝拾い - 4 投影
イメージ
イメージ
1 イメージの残酷さ - 2 裂け目 - 3 悲しきイメージ - 4 芸術家としての恋人
知りがたい
知りがたき人
1 謎 - 2 無知 - 3 力による規定
誘導
「誰を欲すべきか教えてください」
1 情動的伝染 - 2 指示としての禁止
報告者
注進する人
1 企み - 2 秘密としての外部
耐えがたい
「こんなことがつづくはずはない」
1 恋する者の辛抱強さ - 2 高揚 - 3 忍耐
出口
解決策
1 閉ざされた出口 - 2 悲壮な場面 - 3 罠
嫉妬
嫉妬
1 ウェルテルとアルベルト - 2 切り分けられるパン - 3 嫉妬の排斥 - 4 嫉妬すれば四度苦しむ
わたしは・あなたを・愛しています
愛しています
1 一語としてのJe-t-aime - 2 用法のない語 - 3 発語行為 - 4 お返事はありません - 5 わたしも - 6 唯一の稲妻 - 7 革命 - 8 悲劇的肯定としてのJe-t-aime - 9 「愛しています、わたしも」 - 10 アーメン
憔悴
愛の憔悴
1 サテュロス - 2 欲望・一 - 3 欲望・二 - 4 憔悴
手紙
恋文
1 「わたしはあなたのことを思っています」 - 2 対応と関係 - 3 返事がない
多弁
多弁
1 もてあそぶ - 2 能弁 - 3 練習
魔法
最後の木の葉
1 占い - 2 誓願
怪物のような
「わたしは醜悪な人間だ」
1 横暴な恋人 - 2 怪物のようなもの
沈黙
答えとてなく
1 遅ればせな返答 - 2 なんの益もなく語る - 3 口をきかぬ人
雲
雲
1 恥ずべきメッセージ - 2 微妙な雲、風流
夜
「そして夜が夜を照していた」
1 二つの夜 - 2 ひとつの夜がもうひとつの夜を包みこむ
オブジェ
飾紐
1 換喩 - 2 季語
みだらさ
恋愛のみだらさ
1 実例 - 2 知的な恋人 - 3 恋する者のおろかしさ - 4 時代錯誤なもの - 5 最高の不都合さ - 6 感傷性/セックス - 7 みだらさの本質
泣く
涙の讃美
1 男が涙するとき - 2 泣き方 - 3 涙の機能
うわさ話
うわさ話
1 パレロンからの道すがら - 2 真実の声 - 3 彼/彼女
なぜ
なぜ
1 なぜに - 2 ほんの少し愛する - 3 錯乱、「わたしは愛されている」
拉致
魂を奪われる
1 拉致、傷 - 2 催眠状態 - 3 決心する - 4 抑揚 - 5 額縁 - 6 なんらかの状況下にある - 7 事後に
故人
悲しんでもらえるだろうか
1 他人の生は続くだろう - 2 おしゃべりする
出会い
「大空のなんと青かったことか」
1 恋愛の時間 - 2 出会いの回帰 - 3 陶然となる
反響
反響
1 反響/うらみ - 2 恋愛の怖気 - 3 塩漬け - 4 完全な聴取
目覚め
朝のしらべ
1 長く眠る - 2 目覚め方
いさかい
いさかいをする
1 歴史的にみて、いさかいとは - 2 いさかいのメカニズム - 3 果てしなきいさかい - 4 無意味ないさかい - 5 最後のせりふ
ひとり
「僧はひとりも従っていなかった」
1 異端者 - 2 すべての戸口が閉ざされる - 3 恋する者の孤独 - 4 無意味なもの - 5 なぜにわたしはひとりなのか
記号
記号の不確かさ
1 何についての記号か - 2 常識がもたらす二つの矛盾した答え - 3 言語による保証
追憶
「星辰の輝きぬ」
1 病歴口述 - 2 半過去時制
自殺
自殺への思い
1 軽率、安易、単純な - 2 自殺を語る - 3 高貴さとおろかしさ
あるがまま
あるがままに
1 属性 - 2 あるがままに・一 - 3 あるがままに・二 - 4 愚鈍な言語 - 5 星の友情
やさしさ
やさしさ
1 やさしさと願望 - 2 やさしさと欲望
合体
ひとつになる
1 天国 - 2 画きがたいもの - 3 役割をもたず - 4 死すべきものと可能なもの
真実
真実
1 絶対的な知 - 2 真実感 - 3 幻想にあって還元不能な部分 - 4 七斤の重さの衣装
占有願望
飲まずして酔う
1 非・占有願望 - 2 身は退くが譲らず - 3 戦術的思索か - 4 禅と老子の間 - 5 飲まずして酔う
出典リスト――感謝をこめて
訳者あとがき