医事法と患者・医療従事者の権利
判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 464頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-09001-4 |
Cコード | C3032 |
発行日 | 2021年6月21日 |
判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 464頁 |
定価 | 5,720円 (本体:5,200円) |
ISBN | 978-4-622-09001-4 |
Cコード | C3032 |
発行日 | 2021年6月21日 |
コロナ禍とともに医療体制の脆弱さが明らかになっている。医療の枠組みを決めている「医事法」が国からのトップダウンでは、国民の命も健康も、医療従事者の暮らしも守れない。医療崩壊は一時的ではなく、構造的な原因をもつのである。
地方病院の閉鎖。病床の削減。保険制度のアメリカ化。存続の危惧される介護制度。繰り返される薬害・医療事故。
社会では病気への差別がなくならない。生殖医療・臓器移植・終末期医療等を規制するガイドラインには曖昧さが残る。医学部教育では倫理や人権がほとんど教えられていない。世界とのギャップは大きい。
そもそも日本には医療のめざすべき指針を定めた「医療基本法」がない。すべての人が良質、安全そして適切な医療を受けられるように「患者の権利」を中核にした医療基本法の制定が望まれる。そして医療従事者が患者の権利を擁護しつつ、科学性と公正を実現するには、自治が必要だ。
医療に内在するリスクや対立に対処する基準となる「共通の尺度」を定めるのは法の役割だろう。いびつな医事法制を見直さなくては、医療改革はありえない。
医療に無縁の人はいない。刑法学者が医療の現実を分析し、今後への処方箋を提示する。
はじめに――医療基本法の不在の国で
I 行政裁量に委ねられる日本の医療
第一章 医療と医事法
1 医療における「共通の尺度」の必要性
2 医事法の果たすべき役割と指導原理
3 ハードローとソフトロー
4 三面関係の規律
第二章 「公共財」の医療が崩壊する
1 医療崩壊と日本の医療のアメリカ化
2 医療法――監督権は行政に、医療提供業務は民間に
3 救急医療の提供
第三章 医療従事者の資格・業務とブラック職場
1 ブラック職場と離職
2 厚労大臣の監督権
3 ピラミッド型の構成
4 資格の取得と取消し
第四章 インフォームド・コンセントと診療情報の提供
1 インフォームド・コンセント法理の形成
2 日本に導入されたインフォームド・コンセント法理
3 診療情報の保護と閲覧
第五章 感染症と公衆衛生
1 感染症と予防法規
2 新型コロナウイルスのまん延と医療供給体制
3 公衆衛生と保健
4 予防接種と事故防止
II 翻弄される医療弱者
第六章 精神科医療
1 監禁の歴史
2 強制入院
3 世界の流れ
4 精神医療の改革
第七章 生殖医療と命の選別
1 優生思想と優生保護法
2 生殖補助医療とソフトロー
3 選別出産
4 人工妊娠中絶
第八章 脳死と臓器移植
1 脳死の法制化
2 臓器移植
3 臓器移植という「生きる希望」
第九章 子どもと高齢者の医療
1 子どもの医療
2 高齢者の医療
III 患者と医療従事者の人権を守る医療へ
第十章 生と死の尊厳――行為規範としての法の役割
1 安楽死と尊厳死
2 終末期医療
3 重度障害新生児の治療
第十一章 拘禁施設における医療
1 刑務所医療
2 薬物乱用――「刑罰モデル」から「医療モデル」へ
第十二章 医学研究と戦略商品開発
1 医学研究の一般原則──戦争の教訓
2 医学界の受動的な姿勢
3 健康・医療の戦略産業化
4 予防医学の後進国
5 医薬品をめぐる諸問題
第十三章 医療事故と薬害の再発防止
1 医療訴訟
2 医療事故の法的規律
3 医療事故の予防と救済制度
4 薬害救済制度
第十四章 疾病差別
1 ハンセン病差別
2 精神障がい者差別
3 新型コロナウイルス禍の差別
第十五章 患者の権利を中核とする医療基本法
1 ヨーロッパの患者の権利法
2 日本における患者の権利法運動
3 医療基本法の制定に向けて
おわりに──生きた医事法のために
註