みすず書房

嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書 電子書籍あり

自閉症者と小説を読む

SEE IT FEELINGLY

Classic Novels, Autistic Readers, and the Schooling of a No-Good English Professor

判型 四六判
頁数 376頁
定価 4,180円 (本体:3,800円)
ISBN 978-4-622-09004-5
Cコード C0098
発行日 2021年6月16日
電子書籍配信開始日 2021年7月2日
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嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書

6人の自閉症者と文学教授が、『白鯨』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』『心は孤独な狩人』などの名作をともに読んだ読書セッションの記録。自閉症者は「心の理論」を持たない、想像による遊びができないといった偏見は早々に覆されるが、それだけではない。「カテゴリー化以前」の感覚を通して物語と関わることで、自閉症者がユニークで鮮烈な読書体験をしていることが明らかになる。
それぞれ独特の症状や経歴をもつ彼らの、物語への感受性はときに痛切とも言えるほど鋭敏だ。たとえば『白鯨』を読む第一章では、言葉を話さない自閉症の青年ティトが、どの登場人物よりも鯨に自分を重ねながら小説世界を「泳ぎ」、その感覚を詩に綴りはじめる。『白鯨』のモチーフはやがて、ティトと著者の生活全体を呑み込んでいく。
著者は近年の脳科学的知見にもとづいて、「神経多様性(ニューロダイバーシティ)と読書」というテーマをかつてないほど掘り下げている。そこでは、自閉症者と定型発達者、双方の読み方の特性が互いを照射し合い、読むという行為の尽きせぬ可能性を浮かび上がらせる。だからこそ、本書の読後に強く体感されるのは、多様な脳と交感する文学の力の無辺さだ。

参考文献リスト

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目次

本書に寄せて(スティーヴン・クーシスト)
はじめに

プロローグ──言葉の大河に浮かぶ私たちの神経の筏
DJ・サヴァリーズと読書

第一章 海のように揺らめく世界から
ティト・ラジャーシ・ムコパディエイ×『白鯨』

第二章 脳の天空
ジェイミー・バーク×『儀式』

第三章 アンドロイドと自閉症
ドーラ・レイメイカー×『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』

第四章 自分の足を見つけ出す
ユージェニー・ベルキン×『心は孤独な狩人』

第五章 当たり前を疑うために
テンプル・グランディン×『ミート』『ジ・エクスタティック・クライ』

エピローグ

謝辞
引用出典
原注
日本語版への注記
索引

書評情報

伊藤亜紗
(東京工業大学教授・美学)
毎日新聞 2021年7月24日
聖教新聞
2021年9月28日
ブレイディみかこ
(ライター)
週刊エコノミスト「自閉症者は極上の受け手 読む行為の再考促す一冊」 2021年10月19日号
仲俣暁生
(編集者・文芸評論家)
婦人公論「彼らが感情移入したのは、鯨、川、アンドロイドだった」 2021年10月26日号