みすず書房

ネット企業はなぜ免責されるのか

言論の自由と通信品位法230条

THE TWENTY-SIX WORDS THAT CREATED THE INTERNET

判型 四六判
頁数 456頁
定価 5,720円 (本体:5,200円)
ISBN 978-4-622-09006-9
Cコード C0036
発行日 2021年6月16日
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ネット企業はなぜ免責されるのか

インターネットを誹謗中傷の空間に創り上げたのは、AppleがiPhoneの初号機さえ発売しておらず、マーク・ザッカーバーグがまだ11歳のころに議会に提案された、ある法律だった――。
1996年に米国で成立した通信品位法230条は、起草段階では、匿名掲示板の主に性的な品位を欠いた投稿に対して、プロバイダー企業、プラットフォーム企業による自主規制を促すための法律だった。
しかし、1997年にケネス・ゼラン対アメリカ・オンライン訴訟の判決が出ると、風向きが変わる。ユーザーの「言論の自由」を侵害しないために、企業側はむしろ投稿の監視を怠っているほうが責任を問われない、という判例ができてしまったのだ。
匿名の誹謗中傷、性的人身取引の窓口、テロリストの募集……。通信品位法230条は成立から20年以上にわたり、多くの被害者が生まれる場を提供している企業を守り、育ててきた。ネット社会の礎となった法の起草から転換点となった裁判、法解釈の変遷までを克明に描く歴史物語。

目次

謝辞
イントロダクション

第I部 230条の誕生
第1章 エレアザル・スミスの書店
第2章 プロディジーの例外
第3章 クリスとロンのランチ

第II部 230条の興隆
第4章 ご注文はケンまで
第5章 ヒムラーの孫娘とベイジョー星の少女
第6章 フラワーチャイルドと一兆ドル産業
第7章 アメリカ例外主義

第III部 230条のほころび
第8章 無法地帯?
第9章 230条を突き崩せ

第IV部 230条の未来
第10章 サラ対ダーティー・アーミー
第11章 殺せ、殺せ、殺せ、殺せ
第12章 モデレーションの動向
第13章 例外中の例外

結論

解説 インターネット媒介者責任の現状と名誉毀損に対する法的救済の動向(長島光一)

原註
索引

書評情報

池田純一
(コンサルタント)
「かくして〈インターネット例外主義〉の時代の幕は開けた」 
WIRED 2021年10月9日
林 香里
(東京大学大学院教授)
「人間の「悪」を増幅 SNSの罪と向き合う時」
朝日新聞「論壇時評」 2021年10月29日