みすず書房

スペイン内戦と国際旅団

ユダヤ人兵士の回想

MA GUERRE D'ESPAGNE

Brigades internationales : la fin d'un mythe

判型 四六判
頁数 344頁
定価 4,400円 (本体:4,000円)
ISBN 978-4-622-09007-6
Cコード C0022
発行日 2021年7月20日
オンラインで購入
スペイン内戦と国際旅団

ポーランドで育ち、早くから共産主義運動にコミットしたステインにとって、1936年8月のモスクワ粛清裁判は背筋の凍る衝撃だった。ソヴィエト権力の中枢にいたジノヴィエフやカーメネフがスターリンによって粛清されたのだ。
スペイン内戦が勃発したのはそんな時だ。「ファシズムと解放勢力の戦い……世界はふたつの陣営に分かれようとしている。古くて反動的な者はフランコ将軍側につき、夢と自由を担う者は、危機にあるスペイン共和国と隊列を組むだろう」。彼はスターリンに対する「疑念の叫びを戦場で叩きつぶすため」に、国際旅団の志願兵となった。
世界中から、理想を同じくする何千という若者が、聖なるオーラを漂わせて集結した。迎えたバルセロナ市民も熱狂した。若いオーウェルもヘミングウェイもいた。
しかし日を追うごとに、「国際旅団」がスターリン主義のプロパガンダにもってこいの神話にされたことが見えてくる。「私はベールをはぎとり、国際旅団をその現実の姿で描きだすつもりだ。……革命という語に託されたイメージは共産党の最悪のウソのひとつであり、類をみないほどの事実の歪曲であることをしめすためだ」。この回想記は、筆致を抑えて書かれた稀有な参戦記だ。ステインが属したユダヤ人部隊には武器も食糧も支給されず、肉弾戦を強いられた。部隊は壊滅し、彼自身は奇跡的に生還した。

目次

はじめに
地図・1937年9月の戦況

1 スペインへの出発
2 モスクワ粛清裁判
3 共産党幹部とのスペインに関する議論
4 パリ! ポーランド部隊に編入される
5 なんという驚き――バルセロナ号にロシア人招待客!
6 無政府主義者たちとの出会い
7 アルバセテ――国際旅団司令部
8 検閲の邪悪な役割、不吉な悪夢
9 国際旅団のユダヤ人
10 アルバセテの殺し屋
11 酒宴と乱痴気騒ぎ
12 ヴィクトル・アルテルがアルバセテに来る
13 危ういところで抹殺を免れる
14 わが友、ヴィリニュスのレシェク・パサッキの死
15 ロシアの支援とは
16 スペイン共和国はフランコに対してどんな防衛手段をもっていたか?
17 博物館からきた鉄砲と大砲
18 血にまみれた五月の日々
19 ラ・パシオナリア、スペイン革命の母
20 ムルシアの病院に入院
21 ウッチの御者とブエノスアイレスの医師
22 看護師カルメン
23 二度目のバルセロナ
24 パリ近郊のスペイン病院
25 ふたたびスペインへ
26 謎の将軍ゴメスとは何者か?
27 ボトヴィン中隊の壊滅

娘が語る父シグムント・ステイン  オデット・ステイン
解説  ジャン=ジャック・マリ
原典・イディッシュ語版の謝辞
フランス語版訳者の謝辞  マリナ・アレクセーヴァ=アンティポフ
日本語版訳者の謝辞

書評情報

星野博美
(写真家・作家)
「現在にも通じる時空を超えた一冊」
AERA 2021年11月8日号