一冊の、ささやかな、本
ヴァルター・ベンヤミン『一九〇〇年ごろのベルリンの幼年時代』研究

判型 | A5判 |
---|---|
頁数 | 392頁 |
定価 | 7,700円 (本体:7,000円) |
ISBN | 978-4-622-09585-9 |
Cコード | C0098 |
発行日 | 2023年1月5日 |

判型 | A5判 |
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頁数 | 392頁 |
定価 | 7,700円 (本体:7,000円) |
ISBN | 978-4-622-09585-9 |
Cコード | C0098 |
発行日 | 2023年1月5日 |
「新たな手稿――一冊の、ささやかな、本――を持っていきます。きっとあなたは驚かされることでしょう」
(1932年11月10日付アドルノ宛書簡)
1930年代のヨーロッパ、亡命生活のさなかにヴァルター・ベンヤミンは『1900年ごろのベルリンの幼年時代』を「一冊の、ささやかな、本」として世に出すことを試み続けた。1932年秋に執筆が開始された『幼年時代』は、足かけ7年におよぶ推敲作業を経て、1938年パリ脱出の直前に完成稿がジョルジュ・バタイユに預けられたのち、1981年にジョルジョ・アガンベンによってパリ国立図書館で発見された。ベンヤミンはなぜ本書の完成と出版に執着したのか。本書が完成稿へといたる道筋とそこに収斂された思想とは何か。
「だからこそ『幼年時代』においては、子どもが主人公として選択されなくてはならなかった。すなわち、すでに喪失した能力としての〈不器用さ〉をかつての〈わたし〉=子どもから学びとるために」。
手稿、メモ書き、タイプ稿など各ヴァージョンの生成過程をたどり、回想という方法、主人公としての子ども、書物という媒体の形式から、彼が完成と出版にこだわった30篇のテキストを読み解く。新全集版に基づく新たな『幼年時代』研究。
凡例
はじめに
序論
第一章 本書の問題提起
第一節 ベンヤミン作品の研究・受容史概観
第二節 「一冊の、ささやかな、本」への道――問いと構成
第二章 「覚書」から書物へ――作品生成過程
第一節 1932年夏『ベルリン年代記』
第二節 1932年秋~冬「フェリーツィタス手稿」「シュテファン手稿」
第三節 1932年12月~1938年初夏 新聞・雑誌掲載
第四節 1933年「ベルリン・タイプ稿」1938年「パリ・タイプ稿」
第一部 「故郷」の削除――回想方法
第三章 「郷愁」から離れて
第一節 パリ・タイプ稿「まえがき」
第二節 青年運動
第三節 ハインレと「ハイム」
第四節 「わたし」をめぐって
第四章 方法としての「研究」
第一節 「中毒症状」と「予防接種」
第二節 「書き込み」から「書き直し」へ
第三節 ベルリンを歩く、あるいは通過する
第四節 フランツ・ヘッセル
第五章 せむしの小人に出会うために
第一節 ベンヤミンと小人
第二節 小人の声
第三節 「不器用」な「祈り」
第二部 ベンヤミンの〈子どもの世界〉――主人公
第六章 世界の組み替え
第一節 神話にたいする闘争
第二節 メールヒェン――戦略としての児童書
第三節 子どもの手
第四節 「お話」と子ども
第七章 「世界史」との対決
第一節 〈創造者〉としての子ども
第二節 「歴史の天使」と「幸福」
第八章 世界を歪める
第一節 模倣論とシュテファン観察記録――後期言語哲学
第二節 誤解する子ども
第三節 「蝶を追う」――擬態する子ども
第四節 「色彩の獲物」――「空想」論
第五節 「雲の故郷」
第三部 「一冊の、ささやかな、本」――形式
第九章 「家」としての書物
第一節 「わたしが造ったノアの方舟」
第二節 「宿」から「家」へ
第三節 「カワウソのもとがわたしの家だった」
第十章 書物と「傷」
第一節 「擦り切れた書物」
第二節 『幼年時代』、その後
あとがき
参照文献一覧