みすず書房

プロセスモデル

暗在性の哲学

A PROCESS MODEL

判型 A5判
頁数 520頁
定価 7,480円 (本体:6,800円)
ISBN 978-4-622-09590-3
Cコード C1011
発行日 2023年2月10日
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プロセスモデル

〈私たち人間は確かに知覚するものであるが、同時にまたより原初的かつより直接的に相互作用する生き物でもある。私たちはこの生命を他のすべての生き物と共有する。植物のように、私たちの身体は身体として、私たちの五感とともにのみ生じるものとしてではなく、相互作用する〉
著名な心理学者カール・ロジャーズの共同研究者にして後継者、また、心理療法の技法・フォーカシングの開発者として、ユージン・T・ジェンドリンの名前と業績は今日広く知られている。
一方で、ジェンドリンはそもそも知覚とはどのようなものであるかを、深く探究していた。本書は、ジェンドリンが心理学分野における主著『フォーカシング』を上梓するにいたる研鑽と並行して深めてきた哲学的思索の結晶であり、動植物や人間が生きる世界を包括的に把握しようと試みた理論モデルである。
動物はいかに行動を獲得するのか。人間はどのように言語を獲得し、いかにして創造することを可能にしてきたのか。そして、われわれ人間が知覚する以前に「暗在するもの」とは何か――。近代の科学と哲学が暗黙のうちに前提としてきた還元主義を乗り越え、「新しい人類」像をも提示しようとしたジェンドリンの思考の到達点。

目次

前書き(ロバート・A・パーカー)
謝辞
序文(ユージン・T・ジェンドリン/ディビッド・ヤング)
序言的な注

I 身体‐環境(B-En)

II 機能的循環(Fucy)

III 対象

IV 身体と時間
IV‐A 機械ではない身体についての異なる概念
(a)(あるプロセスが停止したとき)身体は継続する何かである──それは別のプロセスである
(b)インプライングの全体だけが存在する
(c)身体はサブプロセスである──そのサブプロセスはどこまでも身体‐環境#2および環境#3である
(d‐1)身体のシンボリックな諸機能
(d‐2)私たちがさらに概念を形成していくためのいくつかの要請
(e)万事連関(evev)
(f)焦点化
(g‐1)連関
(g‐2)新旧のモデル──いくつかの対比
(h‐1)交差、メタファー、生起の法則
(h‐2)自由度
(h‐3)スキーマ化することによってスキーマ化されること(sbs)
(h‐4)sbsの二つの方向
IV‐B 時間――環境#2と環境#3、生起とインプライング

V 進化、新しさ、安定性
V‐A 介在する事象
(a)最初に、大きな新しい事象が、他の諸プロセスの中でどのように発展できるのかについて考えてみよう。
(b)新しい諸事象は、私たちが〝停止したプロセス〟と呼ぶもの自体の中で発展するかもしれない。
V‐B 安定性――開かれた循環

VI 行動
VI‐A 行動と知覚
VI‐B 行動空間の発展
(a)動機づけ
(b)交差‐文脈的形成
(c)行動空間
(d)ピラミッド化
(e)対象の形成──対象が出現する
VIの補遺
(f)静止知覚、インパクト知覚、背後の知覚
(g)連関化
(h)結節化
(i)圧縮
(j)より原初的な水準への“逆戻り”
(k)行動的な身体‐発達
(l)習慣
(m)キネーション(想像とフェルトセンス)

VII 文化、シンボル、言語
VII‐A シンボリックプロセス
(a)身体の見え
(b)ダンス
(c)表象(リプリゼンテーション)
(d)二重化(ダブリング)
(e)表現
(f)新たな種類の推進
(g)像
(h)見られるもの(シーン)と聞かれるもの
(i)行為(アクション)
(j)普遍(ユニバーサルズ)(類(カインド))
(k)行為(アクション)とジェスチャー
(l)スロット化された儀式
(m)つくること(メイキング)とイメージ
(n)連続と道具の新鮮な形成
(o)スキーマ的な諸用語──メッシュ化された、暗在的な機能、ヘルド、再構成化
VII‐B 原言語
(a)内的空間
(b)フリップ
(c)秩序
(d)この目の前の文脈における不在の文脈
(e)クラスターの交差、いわゆる“慣習的”なシンボル:それらがそれぞれの状況において、もはや身体の象徴的像(アイコニック)ではなく、それにもかかわらず、いかに恣意的ではなく有機的であるか──原言語的シンボルの内部関係
(f)言語の形成──二種類の交差
(g)フリップはいつなのか。言語の使用における音‐形成の中止
(f)の補遺 細部は脱落しない──普遍は空虚な共通性ではない

VIII 暗在するものによって考える
(a)導入
(b)直接照合体とフェルトシフト
(c)新たな種類の連続
(d)連関と完全なフィードバック対象
(e)新たな推進と新たな空間の図式的概略
(f)直接照合体の形成を例証する諸要点について急ぎ言明すること
(g)VIII‐fへの付記
VIIIの補遺──モナドとダイアフィル
モナド
ダイアフィル
結論と始まり

原注
補論1 『プロセスモデル』理解のために(得丸智子)
補論2 『プロセスモデル』のわかりにくさに取り組むためのいくつかの「読み」(村里忠之)
解説(村里忠之)
訳者あとがき(末武康弘)
文献
索引