みすず書房

21世紀の戦争と政治

戦場から理論へ

WAR FROM THE GROUND UP

Twenty-First Century Combat as Politics

判型 四六判
頁数 408頁
定価 4,950円 (本体:4,500円)
ISBN 978-4-622-09673-3
Cコード C0031
発行日 2024年3月15日
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21世紀の戦争と政治

対立する二陣営が戦い軍事的な優劣によって政治的取り決めを行う。こうした旧来の戦争を自由陣営が今後主体的に戦うことはほぼないだろう。21世紀に欧米が関わった新しい戦争の本来の目的は治安の確立維持で、戦果ではない。そこでは戦争は政治の直接的な手段となっている。
英陸軍士官としてアフガニスタン紛争を戦った(2006-12年)著者は、欧米がそれを旧来の戦争概念で捉えたために暴力を拡散する結果を招くのを見た。本書はその戦場から放たれた批判の書であり、オックスフォード大学の歴史学徒であったこの青年による著作を、軍事史の大家マイケル・ハワードは「クラウゼヴィッツ『戦争論』の終結部と呼ぶに相応しい」と激賞した。
武力を否定しない点でこれは反戦の書ではない。所謂「テロとの戦い」の正当性は疑うべきだ。しかし本書の理論が実践されれば愚かな戦いは減るだろう。現代の戦略思考はオーディエンスへの説得力を具え、合理性、感情、道徳的一貫性への配慮を必要とする。問題は勝敗ではなく、戦闘は意味を付与される言語なのである。「この議論がもたらすパラダイムシフトは戦場を遥かに越えて意味をもつ」(ニーアル・ファーガソン)。戦争を問う現代の必読書。

目次

序――戦争のナラティヴ  サー・マイケル・ハワード

序論
第一章 戦争の言語
第二章 クラウゼヴィッツ的戦争と現代の紛争
第三章 グローバル化と現代の紛争
第四章 戦略的対話と政治的選択
第五章 自由陣営と戦略的対話
第六章 プラグマティズムと作戦の思考
第七章 ボルネオ紛争(1962年-66年)における英国の戦略
第八章 戦略ナラティヴ
第九章 戦略ナラティヴにおけるエートス、ヴィジョン、信頼
結論 現代の戦略思考

謝辞
訳者あとがき
原注
索引

戦争概念を更新する重要書

(WEBみすずサイト「新刊紹介」)

書評情報

小谷賢
(日本大学教授)
「戦闘の意味を左右する観衆」
日本経済新聞 2024年5月5日
保阪正康
(ノンフィクション作家)
「クラウゼヴィッツ後を読み解く」
朝日新聞 2024年6月1日
柳原伸洋
(東京女子大学歴史文化専攻教員・ドイツ近現代史)
「われわれの戦争観をアップデートする書――現代戦争を蟻の目と鳥の目から理解する試み」
週刊読書人 2024年7月5日号
奥山真司
(地政学・戦略学者)
「クラウゼヴィッツの『戦争論』を超える新たな戦争についての理論――元英陸軍士官の手による実に緻密な筆致の良書」
図書新聞 2024年7月6日号(3646号)
岡和田晃
(文芸評論家・作家)
「〈世界内戦〉下の文芸時評 第一一四回 到来する野蛮さ、翼賛と検閲の再考」
図書新聞 2024年8月31日号
保阪正康
(ノンフィクション作家)
朝日新聞書評委員の「今年の3点」
朝⽇新聞 2024年12月28日